表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/99

第54話 最深部への招待

集合意識の中心部から、また、あの少女の声が響いてきた。


『こっちへ来て』


最初の巫女が、慎一を呼んでいる。


慎一の意識は、無数の層を通り抜けて、最深部へと導かれた。


そこは、もはや人間の理解を超えた領域だった。


時間と空間が歪み、過去と未来が混在し、生と死の境界も曖昧。


そして、中心には、一人の少女がいた。


千年前の巫女。


しかし、その姿は、もはや人間とは呼べなかった。


体は水晶のように透明で、内部では無数の顔が浮かんでは消えている。歴代の水籠たちの顔。彼女は、すべての水籠の苦痛を、一身に受け止め続けていた。


『やっと、会えた』


巫女が、慎一に向かって手を伸ばした。


『あなたになら、できるかもしれない』


『何が?』


『私を、殺すこと』


慎一は驚いた。


神を殺す。それが可能なのか。


『私は、もう限界なの』


巫女の透明な顔に、涙のようなものが流れた。


『千年間、すべての苦痛を感じ続けている。新しい水籠が増えるたびに、苦痛も増える。もう、耐えられない』


巫女は、慎一の意識に直接触れてきた。


瞬間、慎一は巫女の感じている苦痛を、すべて体験した。


それは、人間の精神が耐えられる限界を、遥かに超えていた。


千人分の死の苦しみ。


万人分の絶望。


永遠に続く、終わりのない拷問。


慎一の意識は、砕け散りそうになった。


しかし、同時に理解した。


『これも、語り継ぐべき物語』


慎一の意識が、苦痛の中でも輝きを失わなかった。


『最初の巫女の、千年の物語』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ