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第43話 伊織神官の警告
二人が神社を出ようとした時、伊織神官が現れた。
「待ちなさい」
神官の表情は厳しかった。
「第八の井戸に近づいてはならない」
「なぜです?」
香織が食い下がった。
「朝日様を解放すれば、呪いは解けるはず」
伊織は、深いため息をついた。
「確かに、呪いは解けるかもしれない。しかし、その代償は……」
神官の目に、深い悲しみが浮かんだ。
「朝日様は、千年間氷の中で狂気に蝕まれている。解放すれば、夕日様以上の災いをもたらすかもしれない」
慎一と香織は、顔を見合わせた。
しかし、他に選択肢はない。
「それでも、行きます」
香織が決然と言った。
「このまま、すべての人が水に呑まれるよりは」
伊織は、しばらく二人を見つめた後、懐から古い鍵を取り出した。
「これは、第八の井戸の封印を解く鍵です」
意外な申し出に、二人は驚いた。
「私も、千年この姿で生き続けることに疲れました」
伊織の首筋にも、かすかに鱗のような模様が見えた。
「もし、本当に終わらせられるなら……」




