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第42話 神社での発見

どうやって診療所を出たのか、慎一には記憶がなかった。


気がつくと、神社の境内に立っていた。


太陽は既に傾き始めている。どれだけの時間が経ったのだろう。


体の変化は、さらに進行していた。


皮膚は半透明になり始め、血管ならぬ水管が青く透けて見える。


「まだ、人間でいたい……」


慎一は、這うようにして神社の本殿に向かった。


藁にもすがる思いで、賽銭箱の前で手を合わせる。


その時、本殿の奥で何かが光った。


古い絵馬だった。


埃を払うと、そこには二人の巫女が描かれている。


双子の巫女。


そして、絵馬の裏には文字が。


『第八の井戸は、朝日と共にあり


夕日を鎮めるは、新たなる双子のみ』


新たなる双子。


それは何を意味するのか。


慎一が考えていると、足音が聞こえた。


「やっと見つけた」


振り返ると、香織が立っていた。


水野教授の娘、水野香織。


彼女の手には、古びた革表紙の日記が握られていた。


「あなたも、来ていたのね」


そして、彼女の腕にも、青い痣が広がっていた。


「これを読んで、すべて理解したわ」


香織の目には、深い悲しみと決意が宿っていた。


「父は、最後まで真実を追い求めていた。水籠の謎を解き、人々を救うために」


香織は日記を開いた。そこには、水野教授の震える文字でこう記されていた。


『香織へ。もし私が戻らなかったら、この研究を引き継いでほしい。しかし、無理はするな。お前には、普通の人生を歩んでほしい。だが、もしお前が父の遺志を継ぐというなら……八雲島の真実を、世に伝えてくれ。愛する娘へ 父より』


「私は医者になった」


香織が続けた。


「父の研究を理解し、引き継ぐために。そして今、その時が来た」


香織が、震える声で言った。


「この島の呪いも、水籠の真実も、そして第八の井戸の存在も」


慎一は、混濁する意識の中で香織を見た。


彼女もまた、水の侵食を受けている。


「でも、まだ方法はあるわ」


香織が、古い地図を広げた。


「父が残した、最後の手がかり。第八の井戸の正確な位置」


地図には、島の北東部、深い森の中に印がつけられていた。


「今夜、行きましょう」


香織の目には、強い決意が宿っていた。


「明日の祭りの前に、朝日を解放する」


慎一は頷こうとしたが、体が言うことを聞かない。


水の支配が、刻一刻と強まっている。


「私の父も、最後まで戦った」


香織が、慎一の手を取った。


その手も冷たかったが、まだ人間の温もりが残っていた。


「だから、私たちも最後まで諦めない」

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