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第38話 水槽の中の失敗例
次の部屋には、大きな水槽がいくつも並んでいた。
中には、人間だったものが浮いている。
完全に透明になった者、半分だけ変化して苦しんでいる者、そして不定形の塊と化した者。
「失敗例です」
深海が淡々と説明した。
「水への変化を拒んだ結果がこれです」
水槽の中の存在たちが、慎一を見た。助けを求める目。しかし、もう遅い。
「明日の祭りで、あなたも選択を迫られます」
深海が言った。
「受け入れるか、拒むか。拒めば、彼らのようになる」
慎一は恐怖で震えた。
「なぜ、こんなことが」
「すべては、千年前から定められた運命」
深海は、古い書物を取り出した。
『八雲島水籠之記』
その中には、恐るべき真実が記されていた。




