37/99
第37話 地下の真実
地下は、想像を絶する光景だった。
無数のガラス瓶が棚に並び、中には臓器のようなものが浮いている。しかし、それらは普通の臓器ではない。半透明で、脈動し、明らかに生きている。
「これらは、歴代の水籠たちの変化の記録です」
深海が誇らしげに説明した。
「三百年にわたる、人間から水への進化の過程」
慎一は吐き気を堪えた。
「進化じゃない、これは病気だ」
「病気?」
深海が笑った。
「そう考えるから苦しむのです。受け入れなさい。これは次なる段階への移行なのです」
深海は、慎一を診察台に座らせた。
聴診器を当てられると、激痛が走った。金属が、変化した皮膚を焼く。
「ふむ、心音に水の流れる音が混じっていますね。順調です」
採血をされたが、出てきたのは血ではなく、青みがかった透明な液体だった。
「素晴らしい。もう60%は置換されている」
深海は恍惚とした表情で試験管を見つめた。
「通常なら、この段階で意識を失うのですが、あなたは違う」
慎一は、診察台から降りようとした。
「もう十分です」
「いや、まだ見ていただきたいものがある」
深海は、慎一を別室へ案内した。




