表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/99

第33話 朝の異常

朝になって、慎一は恐る恐る部屋を出た。


廊下を見ると、昨夜の水跡は乾いていた。


しかし、かすかに塩の結晶が残っている。


やはり、夢ではなかった。


食堂に降りると、妙な光景が広がっていた。


老人、中年男性、月島。


三人とも、席についているが、誰も話さない。


ただ、じっと前を見つめている。


そして、三人の髪が、微妙に濡れている。


「おはようございます」


慎一が声をかけても、反応が鈍い。


ゆっくりと振り返り、焦点の合わない目で慎一を見る。


「あ……おはよう……ございます」


老人の声は、かすれていた。


そして、口元から、一滴の水が垂れた。


透明な、しかし普通の唾液ではない水が。


「大丈夫ですか?」


慎一が心配して近づくと、老人は慌てて口元を拭った。


「ええ、大丈夫です。ちょっと、むせただけで」


しかし、テーブルの上には飲み物も食べ物もない。


何にむせたというのか。


中年男性も、月島も、同じような状態だった。


ぼんやりとして、反応が鈍く、そして体のどこかが濡れている。


「皆さん、昨夜はよく眠れましたか?」


慎一が尋ねると、三人は顔を見合わせた。


「昨夜……?」


「よく……覚えていません」


「夢を……見ていたような」


曖昧な返事ばかりだった。


キヨが朝食を運んできた時、慎一は思い切って聞いてみた。


「あの、昨夜、何か変わったことは……」


「変わったこと?」


キヨは首を傾げた。


「特に何も。皆さん、ぐっすりお休みでしたよ」


しかし、キヨの目も、どこか違って見えた。


いつもの優しい目ではなく、何かを隠しているような目。


「今日は、特別な日ですから」


キヨが、意味深な笑みを浮かべた。


「祭りの前日。島が、一番神聖になる日」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ