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第29話 シンクロする島民たち

朝食後、慎一は散歩に出た。


新鮮な空気を吸えば、気分も良くなるだろう。


しかし、集落の様子も、どこか違っていた。


まず気づいたのは、島民たちの動きだった。


港で網を繕う漁師たち。その手の動きが、完全に同じリズムで動いている。


五人の漁師が、まるで一人の人間のように、同じタイミングで針を通し、同じタイミングで糸を引く。


「おかしい……」


慎一は立ち止まって見つめた。


しかし、次の瞬間、漁師たちの動きがバラバラになった。


一人が慎一に気づいて手を振り、他の漁師たちも振り返る。


「おはよう!」


バラバラのタイミングで挨拶が飛んできた。先ほどまでの統一感が嘘のように。


「調子はどうだい?」


いつもの親しげな挨拶。


慎一も手を振り返した。


気のせいだったのだろうか。


しかし、歩き続けると、また同じような光景を目にした。


畑で作業をする女性たち。


鍬を振り上げ、振り下ろす動作が、完全にシンクロしている。


まるで、見えない指揮者に合わせて動いているような。


慎一が近づくと、また動きがバラバラになった。


「あら、羽生さん」


「お散歩ですか?」


普通の会話、普通の笑顔。


でも、何かが違う。


慎一は、不安を感じ始めていた。


「あの、皆さんの動きが……」


聞こうとしたが、言葉が続かなかった。


「シンクロしていた」などと言っても、信じてもらえないだろう。


気のせいだと笑われるだけだ。


慎一は、曖昧に笑ってその場を離れた。

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