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第26話 三日目の穏やかな時間

三日目の朝も、快晴だった。


今日は、島の祭りの準備があるという。


「年に一度の大祭が、もうすぐなんです」


朝食の席で、キヨが説明した。


「島中総出で準備をします。もしよかったら、お手伝いいただけませんか?」


慎一たちは、喜んで手伝うことにした。


集落の広場には、すでに多くの島民が集まっていた。


男たちは櫓を組み立て、女たちは飾り付けの準備をしている。子供たちも、お手伝いと称して走り回っていた。


「おお、手伝ってくれるのか」


大工仕事をしていた男性が、嬉しそうに声をかけてきた。


「人手が多いに越したことはない。頼むよ」


慎一と中年男性は、櫓の組み立てを手伝った。


重い木材を運び、ロープで縛る。都会では経験できない、肉体労働。


しかし、不思議と楽しかった。


「そうそう、そこをしっかり結んで」


島の男たちが、丁寧に教えてくれる。


「昔はな、もっと大きな櫓を作ったもんだ」


年配の大工が、昔話を聞かせてくれた。


老人は、女性たちと一緒に飾り付けを手伝った。


色とりどりの布や花を使って、美しい飾りを作っていく。


「器用ですね」


女性たちが感心している。


「昔取った杵柄です」


老人も嬉しそうだ。


月島は、子供たちの面倒を見ていた。


「お姉ちゃん、これ見て!」


子供たちが、貝殻や石を持ってくる。


「まあ、きれい」


月島の顔には、自然な笑顔が浮かんでいた。


昼食は、みんなで作った炊き出しだった。


大鍋で作った豚汁と、おにぎり。


シンプルだが、みんなで食べると格別に美味しい。


「いやあ、久しぶりに体を動かしたら、腹が減った」


中年男性が、おにぎりを頬張っている。


「こういうのも、いいもんですね」


午後も、準備は続いた。


慎一は、神社の掃除を手伝った。


落ち葉を掃き、石段を水で洗う。


神官の伊織が、丁寧に指導してくれた。


「祭りは、神様をお迎えする大切な行事です」


伊織の真摯な姿勢に、慎一も背筋が伸びた。


「だから、心を込めて準備をします」


夕方になると、準備もほぼ整った。


櫓は立派に組み上がり、飾り付けも美しく仕上がった。


「みなさんのおかげです」


島の人々が、口々に礼を言ってくれた。


「また明日も、よろしくお願いします」


宿への帰り道、慎一は充実感を感じていた。


一日中体を動かし、島の人々と一緒に汗を流した。


これも、島の日常の一部なのだろう。


みんなで協力し、助け合い、一つのことを成し遂げる。


都会では失われつつある、共同体の温かさ。


「楽しかった?」


あかねが聞いてきた。


「ああ、すごく」


慎一は素直に答えた。


「島の人たちって、本当に温かいね」


「でしょう?」


あかねが誇らしげに言った。


「これが、私の育った島」

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