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1 弟は難しいお年頃

魔王討伐隊の全滅が確認されたそうだ。

そのせいか、王都付近では魔物が大発生し、スタンピードまで発生して大変らしい。


酒場や市場では、みんな、世界が滅びるかも、みたいな話ばかりしている。

でも、私たちが住んでいるヤポックは、田舎の小さな村で、とても平和なので、まるで実感がわかないわ。


私は、今日も日が昇る前に起きる。


井戸で水を瓶に汲んで、ついでに顔を洗っていると、弟のレオンがやってくる。


「ステラ、おはよう。水は運んでおくよ」


ステラは私の名前だ。レオンは最近大人ぶって私を名前で呼ぶ。

つい先日までは、姉さんと言って甘えていたくせに、お年頃ってやつなのかしら。


レオンがプラチナブロンドの前髪をさらりとかきあげると、髪の間から少し紫がかった青い目とめちゃくちゃ整った顔がのぞいた。

まだ16歳だから、まだまだ成長期、もう少し背が伸びたらきっともてるだろう。


だが、今は、私相手に無駄にキラキラした何かを振りまいているだけである。がんばれ。


さて、あとはレオンに任せ、私は畑に行って、トマトやレタスをちぎり、洗う。

すると、水瓶を台所に運んだレオンが気合を入れた顔でやってきた。


「ステラ、今日もよろしく」

「そうね、行くわよ」


私たちは鶏小屋へ行く。

田舎だからかどうかよくわからないが、うちの鶏は、ちょっと気性が荒いのだ。

だが所詮、鳥は鳥、ちょっと気を引けば大事なもののことなんか、すぐに忘れてしまう。


「トートトトトト」

私はできるだけ優しそうな声で鳴きまねをしつつ、トウモロコシや雑穀を撒いて、鶏たちを小屋から遠ざける。

そのすきにレオンが小屋に入り、卵を集めるのだ。


「ね、姉さん!」

レオンに呼ばれたので小屋を覗き込むと、レオンは涙目で固まっていた。

小屋に残っていた雌鶏ににらみつけられて、怖かったらしい。


「もう、しょうがないわね」

私はさっと小屋に入るとレオンの背中をバシッと叩き、ついでに雌鶏を追い払うと卵を全部集めた。


「姉さん、ありがとう」

レオンはへたり込むと、上目遣いでお礼を言った。よっぽど怖かったようで、姉さん呼びに戻っている。まだまだ子供ね。

…とはいえ、実は私たちは同い年なのだけれど、まあ、女の子のほうが精神年齢高いっていうじゃない(えっへん)。


「はいはい」

縋りついてくるレオンを適当にあしらうと、私は台所に行ってストーブ型コンロに火をつけ、卵を焼いて、サラダを作る。ついでに買い置きのパンを温める。


一方のレオンは、身だしなみを整えに洗面台へ行く。

といっても、髪を染めたり、分厚い眼鏡をかけたりと、私から見ればレオンの素材の良さを台無しにするような感じなのだけど、レオンはあれをおしゃれだと思っているみたいだ。

そこらへんは、姉弟といえども好みの問題かな、と思って口出ししないでいる。



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