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責務

徳川家康「なかなか出来る事では無いぞ。」

依田信蕃「ありがとうございます。」

徳川家康「そしてもう1つ我らを苦しめたのが先の田中城。」

依田信蕃「はい。」

徳川家康「正直な事を言って良いか?」

依田信蕃「はい。」

徳川家康「私や織田。そして北条に至るまで高天神落城後における武田の混乱ぶりを知っていた。原因は

『武田勝頼は、(武田に従っている者共が)危機に陥ったとしても助けに来てはくれない。』

と言う認識を植え付ける事に成功したから。間違い無いか?」

依田信蕃「はい。高天神には領内全域から選りすぐりの者が入り。長い間交代する事も出来ない中、最後の最後まで戦い抜いた事。皆が知っています。(依田信蕃が城将を務める田中城がある)駿遠国境を守る私としましても、もどかしい限りでありました。」

徳川家康「故に織田に北条。そして我らが同時に兵を動かせば、(武田の備えは)勝手に崩れ落ちていくものと考えていた。そして実際にそうなった。ただその中にあって最後の最後まで戦い、そして帰還を果たした人物が1人だけいた。それが其方。依田信蕃殿である。」

依田信蕃「攻めなかっただけでありましょう?」

徳川家康「いや。攻める事が出来なかったが正しい。我らは二俣での其方の働きを体験している。田中城は駿河の入口。ここで兵を損耗させるわけにはいかない。10日だったか?」

依田信蕃「そうでしたね。朝起きて見たら、徳川様の部隊の大半は何処かに消えていました。」

徳川家康「信忠様の進出が速かった。

『(信濃における武田の重要拠点)高遠深志の攻撃に取り掛かっている。』

との報告が入った事。そして……。」


 北条氏政が駿河に乱入。


徳川家康「このままでは駿河は北条に奪われる事になってしまう。甲斐信濃における戦闘が終結してしまう。(駿河の入口にある)田中城で足止めを喰らっている状況では無くなってしまった。故に其方に開城の依頼をした事。覚えているよな?」

依田信蕃「はい。」

徳川家康「しかし其方は。」

依田信蕃「殿(武田勝頼)の命令が全てでありますので。」

徳川家康「愚痴って良いかな?」

依田信蕃「構いません。」

徳川家康「何とか富士川より西を確保する事は出来たよ……。ただその時には既に(富士川以)東は北条に占拠され、信濃のいくさも終わっていた。しかし其方は田中城を守り続けていた。」

依田信蕃「殿から

『退去せよ。』

の命令が届いていない以上、田中城を守るのは当然の責務でありますので。」

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