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サキュバス、夢の中では最強です  作者: 雪村灯里
第二章 学院の夢幻迷宮編

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29 迷宮崩壊

 私達は小走りで迷路を進む。今の所、迷路に取り残された生徒や職員は居ない。エスタ先生へ至る光の糸を辿って迷路の最深部に到達した。


 広い空間だった。奥には上り階段が有り、ゴールの扉が見える。


 しすて不気味なほど静かだった。

 光は一つの方向を指し示して役目を終えたようにすっと消えた。指示した先、


 部屋中央にある石の台座―――その上に誰か横たわっていた。


「先生!」「エスタ!」


 私達は駆け寄り確認する。彼は攻撃を受けたのかボロボロだが微かに意識が有る。時折苦しそうに呻いているチャージをしようと顔を近づけたが


 ―――エスタの匂いじゃない。


 私は動きを止めた。―――彼がピクリと動き耳元で声を発した。


「ドウシテ……タスケテクレナイノ?」


 私は慌てて顔を離した。目の前に横たわる人物は瞼を開ける。


 そこにあったのは金色の瞳。潤む瞳は一瞬の悲しみの後、憎しみに染まった。


 私は陛下に引き離され地面に二人して倒れ込む。頭の有った空間を剣が薙いだ。倒れた視線の先、台座の裏側に人が倒れていた。若葉色の綺麗な髪、白いローブの男……こっちが本物の先生だ。


 倒れ込んだ私達に向けて怪物が剣を振り下ろす。それぞれ転がり身をそらしてよけたつもりが……


「―――――っ!!!」


 私の翼が床に縫い付けられた。

 剣が貫通してレンガの隙間に刺ってしまい、怪物も剣を抜こうとするが抜けない様だ。


 怪物は抜けない剣を諦めた。もう一本の剣をさやから抜き、陛下に向かい襲いかかった。

 陛下と怪物は丁度私の背中側で戦っているので見えない。

 私は縫い付けられた剣から逃れようとするが痛みで集中できない。


 痛くても夢から覚められない。

 剣が抜ければまだ対処できるけど背中側で見えない。どうしよう……

 心のどこかで求めていた声が聞こえた。


「ようマヤ……また危ない目にあって……ちょっと我慢てくれ。」


 先生だった。

 彼は迷宮に魔力を奪われてぐったりしていた。それなのに私に手をかざし魔法を使おうとしている。

 私は歯を食いしばり先生の意図することに耐える。剣を浮遊魔法で引き抜くつもりだ。

 剣が動く気配がした。そして、痛みと共に剣が外れた。

 彼は剣が抜けたのを確認したのち気を失った。チャージしなきゃ……


 そう思った時、後方から剣を弾いた音が聞こえた。振り返ると陛下が吹っ飛ばされこちらに飛んでくる。私は彼が台座に直撃しないよう受け止める。


「お怪我はありませんか?」

「ああ、すまない……。」


 彼は苦しそうに詫びる。

 怪物は元の姿に戻っているが奴も陛下もボロボロだ、吹っ飛ばされた時に陛下の魔法の剣は消えてしまっていた。魔法を込めた刃でないと怪物は止められない。


 彼は私を縫いとめていた剣を拾い上げ、魔力を剣にまとわせ立ち上がり攻める。

 激しく剣と剣がぶつかる。しかし剣にも限界が来ていた。


 ―――ギィィン!


 陛下が持っていた剣が折れてしまった。それを見た怪物が彼の腹に蹴りを入れる。

 彼はまた大きく後方に吹っ飛ばされてしまった。それを怪物が狙うが、


 ―――私も怪物を狙っている。


 怪物の脚目掛けて光の矢を放った。それは命中して怪物が膝をつく。

 そして私は陛下の元に駆け寄り、ありったけをチャージした。そして


 ―――カターン……


 私は黒い剣となり彼の足元に転がった。


 そう私は夢の中ならば姿を何にでも変えられる。

 私の意を理解した陛下が剣を拾いあげ、最後の力を振り絞り怪物に突き立てた。魔力を纏った剣を突き立てられ、怪物は咆哮を上げた。そして動かなくなった。


 ずるりと私を抜き、王が倒れ込んだ。私も人型に戻る。


「大丈夫ですか? 今チャージを……」

「いや大丈夫だ。よくやったマヤ。私より、弟の方を頼む。」


 彼は静かにそういった。私は頷いて、台座の影に倒れている先生の元へ向かう。彼を仰向けにして確認する。大きな怪我はしていない。怪力でも抜けなかった剣を魔法で抜いたのだ。力の消耗が激しく意識が無い。


「先生、迎えに来たよ。」


 彼に口づけして生気を流し込む。どうか目覚めて……


 ピクリと彼が動き、瞼がゆっくりと開いた。

 良かった起きた……私は彼に声を掛けようと顔を離す。


「大丈夫?」


 彼はまだ意識が朦朧としているが、こちらを見て優しく微笑む。


「ああ、……悪くない目覚めだ。」


 そう言って彼は私の右角に軽く手を触れ引き寄せ抱きしめた。

 夢が終わりを告げるように周囲が光に包まれて迷宮はボロボロと崩壊していった。


 夢幻迷宮から追い出された私達三人は妖精体のまま薄暗い空間にいた。


 空間が変わると、さすがに彼も解放してくれた。


 ここは……周囲の様子を伺う。石レンガ造りであの迷宮に似ているが壁にはある家族の肖像画、上り階段が有り見覚えが有る扉が開いている。その奥から明けの空が見えた。

 そして中央に台座が有り石の棺が二つ並んでいた。


 その上に2歳くらいだろうか子供の姿になった怪物……いや古の王族アウレムが怯えるように丸まっていた。陛下の魔力でかなり弱らされたようだった動くのも辛そうな顔をしている。


 陛下も部屋の中を見渡して、小さくなった怪物の姿を見る。


「ここは学院の地下室のようだな。彼はこの部屋から出る力すらない様だ。これなら明日予定通り封印できる。」


 封印と聞いて元怪物は助けを求めるように私を見つめた。

 600年もこの中に居たのか……そしてこれからも……


 だが、それを望まぬ人物を私は知っていた。


 私は静かにアウレウムに近寄り彼を抱っこした。彼も素直に抱っこされ、しがみつく。

 先生と陛下は驚いて止めようとするが、私は大丈夫と目で合図して胸の中で泣きじゃくる彼を宥める。


「……ごめんね、私あなたのお母さんじゃないんだ。でも600年もここに居て寂しかったね。怒り疲れたでしょう。だからもうやめよう……。皆の元に帰ろう。今日なら帰れるよ。」


 家族の肖像画に描かれた人物を見て私は納得した。これは初代国王一家の肖像画だ。初代王妃はブルネットで黒い翼と黒い角を持った妖精だった。私が彼女に似ていたのか、それか母の面影を求めたのだろう。だからあんな行動をとったのか。


 彼は落ち着くと私の目を見てこくりと頷いた。そして私は静かに優しく彼の額にキスをしてドレインした。彼の姿はだんだんと薄れて光の粒となりそして静かに明け方の空へと昇って行く。


 彼を待っていたかのようにもう一つの光の粒が寄り添い、二人は空へと還って行った。


 これで良かったのですよね? フロス王妃様。


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