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サキュバス、夢の中では最強です  作者: 雪村灯里
第二章 学院の夢幻迷宮編

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22 王とサキュバス

 今日は早く帰ろうとしたのに助手業が立て込んだ。

 急いだが既に深夜。私は体を抜け出し妖精の姿で城へ向かった。

 昨日寝落ちしてしまったこのについて、可能ならば謝罪をしたい。


 陛下はもう寝てしまったのだろうか? 今日からは城の魔術師が催眠をかける事になっている。間に合うだろうか? ……


 彼の部屋をそっと覗くとベッドサイドの読書灯に明かりがついていた。

 彼はベッドに入りながら本を読んでいた。


 起きてらっしゃる……まだ寝る時間じゃなかったのかな?

 私は慌てて廊下に回って彼に向けて声を掛けた。


「こんばんは、マヤです。」

「―――! ……入っておいで。」


 陛下の優しい声が聞こえた。私はそっと扉を透過して入る。

 彼は少し驚きながらも笑顔で話し始めた。


「やぁ、こんばんはマヤ。催眠をかけてもらうのは昨日までのはずでは……?」

「こんばんは。はい存じております。今日は昨日の事謝りたくて参りました。いきなり押しかけて申し訳ございません……。」


 彼は昨日と聞いて静かに笑った。


「マヤが夢の中で眠っちゃった事かい?」

「はい……お恥ずかしながらその事です。」


「そうか、じゃあ夢の事は夢の中で話そう。実は催眠の掛かりが弱かったようで起きてしまったんだ。君さえ良ければお願いしたい。」


 そう言って彼は持っていた本をぱたんと閉じた。


「はい、それはもちろん。」


 私は昨日の失敗を取りかえすように、横になった彼に催眠をかけた。

 そして私も彼の夢の中へと入り込む。


「昨日はお話し中に眠ってしまい、大変申し訳ございませんでした!」


 私は立ったまま勢いよく頭を下げる。

 今日は座らない。今日も座ると眠りそうだ。二の轍は踏まない。

 それを見て彼はこらえていたのか笑い出した。


「ははははは……真剣に謝ってくれているのに……ごめん。夢の中の陽気が良かったからね。マヤが僕の夢で寛いでくれて嬉しいよ、気にやまないで。……だから今日は座らないのかい?」


「……はいその通りです。エスタ先生にも無防備が過ぎると怒られました。」

「ふふっ……確かに無防備だったね。僕としては可愛い寝顔を見られて得した気分だったよ。」


 ―――寝顔! 変な顔見せてなければいいけど……恥ずかしい。


「お恥ずかしい限りです……。」

「でも、またこうやって話せてよかったよ、もう話せないかと思った。わざわざ来てくれてありがとう。」


「そんな恐れ多いです! さっきも結局は読書の邪魔をしてしまい申し訳ございませんでした……何の本を読まれてたんですか?」


「あぁ、眠くなるまでにと思ったいた物だから気にしないでいい。この国の古い話さ。二人の王子が王座を巡って争った話を読み返していた。」


 王座の争奪戦……私も最近図書館で借りた本で読んだ。この話は初代国王の息子たちの間で起きた事件だった。


【王座争奪~アウレウムとプラティヌム】

 二人の王子が一つの王座を巡って争った。二人の魔力はとても強くこのままでは国が酷く荒れてしまう程だった。

 これに悩んだ王妃フロスは自分の夢の中に二人を閉じ込め、先に出られた方が王として勝負をさせた。第二王子プラティヌムが幻想から脱出し二代目の国王となったが第一王子アウレウムはそのまま幻想の中に閉じ籠り出てくることは無かった。

 眠り続けるアウレウムと王妃は目覚める事は無かった。王妃フロスの夢はそのまま残り続け、二人の体は屋敷の地下に安置された。

 十数年後、アウレウムに似た何かが街を徘徊して人の魂を食らうという事件が起きた。プラティヌム国王と当時の聖女は、アウレウムと王妃が眠る地下室を厳重に封印してそして騒ぎは収まった。


 この国の王族の中で起こった事件としてはこれが一番悲惨だ。

 これを機に王座の相続についても制定されたので大きないさかいは減ったのだろう。



「……陛下とエスタ殿下が仲良しで良かったです。」

「そう見えるかい?」


 ―――え?私は焦った。仲良しじゃないの?


「ごめん、冗談だよ。エスタは城から抜け出すが、先日のように気遣ってくれるいい弟だよ。もちろん、もう一人の弟とも関係は良好だから安心しておくれ。万が一僕らが喧嘩したらリーリやシャルを始め仲裁してくれる人は多いだろう。僕達は本当に人に恵まれている。マヤも、僕達が喧嘩したら仲裁してくれ。その時は頼んだよ。」


 彼はにっこり

 この優しいニグルム陛下が喧嘩をすることが有るのだろうか……?

 実感が湧かないが、


「はい。もちろんです。」


 彼は驚いたが……すぐに困ったように微笑んだ。


「ありがとう。そう言ってもらってうれしいよ。それに、これ以上優しくされるともっと我儘を言いたくなってしまう。」

「え?」


 彼は立ち上がり私の前に立つ

 一瞬、ナイトメア戦を思い出して動けなかった。あの時はとても痛かった。

 しかし……そのようなことは無かった。彼は私の頭をポンポンと撫でた。そしてにっこり微笑みこういった。


「……さあ、今日はお開きにしよう。週の初めで疲れているだろう。またみんなで食事しよう。【自分の体にお戻り】じゃあね、おやすみ。マヤ。」

「―――! はい。おやすみなさい。」


 彼の服従の言葉で体に戻ってきた。右角の装飾に温かみが残っている。

 陛下お兄ちゃんみたいだったな……


 その温かみが残っているうちに眠りに就いた。


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