文明の利器
とりあえずちょこっとGPSデータを拝借していた。
今どきの文明の利器は使わない手はない。
そして自分の携帯からターゲットの情報を拾い当てる。
ちゃんとその手の下処理は済ませておいたのだが……とりあえずいまどこにターゲットがいるかぐらいは把握したかった。
今回のターゲットは特に要人というほどのものでもない。
楽しそうに……このパーク内を遊んでいる様子である。
事前に少し準備をしていたこともあって、そいつの居場所はGPSで俺の携帯から特定は可能だった。
携帯を見ながら……パーク内に居ることは確認できた。
というか……このホラーアトラクション内にいるのか!?
俺はビックリして、目の前のホラーアトラクションをガン見してしまった。
あーチャンスだったのか……?
──溜息一つ。
俺ってやっぱりついてない……。
相良が出てきてから……再度検討しよう。
その前にターゲットの顔でも拝んでおこう。
俺はとりあえず相良がゲットして無理やり俺の頭に装着させた、耳つき被り物を少し深めに被り込む。
そして周りの雑踏と同化していった。
出口から順々に出てくる人の塊を、静かに観察していく。
そして観察しながら色々と計画を再構築していた。
さて、どう動きましょうかねぇ──。
とりあえず動くにあたって相良をどうにかしないといけない。
そうだ、俺はこいつと別行動がしたかった。
まぁ……俺の事知っているんだろうから隠す必要もないだろうが……。
しかし……何故俺の素性を知っていて、今日は「楽しい遊園地を満喫」とか断言したのだろうか。
全く俺に『仕事をさせないつもり』だったのであろうか。
それならかなり不快である。
何を理由にそんな制限を俺に課せるつもりなんだ。
お前が俺を養ってくれるなら別にいいけど。
そう思って慌てて首を横に振る。
いやいやいやいやいやいや……あの素性の分からん奴だ。
『徇くんがそーいうんなら、僕はいつでもウェルカムやでぇ♡』
とかそんな事を言いだして俺を飼いだしても困る。
キモい妄想の結末のお陰で、俺は現実へと一気に戻ってくることができた。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ────。
冗談が全く冗談になる雰囲気がミリも存在しない男だ……と、俺は眉間にしわを寄せた。