いつもの日常のはずが
よくよく考えたら…アレが事の発端だった。
❖ ❖ ❖ ❖
──ドンドンドンッ!
激しくドアを叩く音がする。
なんだ?
俺は覚醒していく意識の中、不思議と微睡を堪能しながら……。
珍しく、俺は家の扉を叩く音で目が覚めた。
何か違和感が自分の感覚を支配している。
しかし、それ以上に微睡という快楽の方が勝っていた。
よくよく考えると、今までそんなことで目を覚ましたことは無い。
いつもは熟睡すらしない……そんな生活だった。
なんで、俺はこんな『音』で目を覚ましているんだろうか。
目を瞑りながら、昨日の出来事を思い起こす。
あれは確か……『仕事』を終わらせてから……。
俺は昨日も依頼のあった『殺し』の仕事をちゃちゃっと終わらせて……珍しく行きつけのBarで飲んで……家に帰ってきたんだ。
──うん、そうだった。
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「いらっしゃい~♡ あら~ひさしぶりぢゃなーい」
そんな甘い声とは裏腹の……逞しい筋肉美の肉体に何故かドレスという……コワモテな美人で人気なママが嬉しそうに俺に声を掛けてきた。
俺はいつもの席、カウンターの隅に座ると頬杖をつく。
すると、おしぼりを差し出してくれたママは、「なんかお疲れぢゃないのぉ~」と心配そうな顔を近づけてきた。
いや、近いって。
「離れろよ」
俺は睨みつけると、なんとかプライベートスペースを確保した。
このママ、人懐っこいのはいいのだが……それに便乗して何しでかすか分からない。
この距離からの、熱い接吻とか……もう勘弁してほしい。
流石に俺もいろいろと勉強させてもらった。
ママはオーダーしなくても俺の好きなモノは理解してくれている。
マンゴー増し増しの甘い甘いオリジナルカクテル。
「ほんとエルちゃんはこれが好きよねぇ」
嬉しそうに笑いながら「エルちゃんスペシャルよん」と差し出してくれた。
俺はマンゴーが大好きである。
三食マンゴーでも生きていける!
まぁ自慢にもならないが……。
とにかく仕事の後のマンゴーが体中に染み渡り、俺は至福の時を過ごしていた。