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第十二話 そこって俺の席ですよね?ストーカーさん?

 昨日の古賀の宣言から一夜明けた朝。


 どこかスッキリした気持ちと、気恥ずかしさの入り混じった思いで学校に向かう。


 始業10分前に到着すると、教室の前が騒然となっていた。



「そうちゃん!」


「颯太!」



 俺が教室に近づくと小走りで、千歳と樹が駆け寄ってくる。


 朝から血相変えてどうしたんだ?



「もうお前がいないと収拾つかないんだ。早くあれをどうにかしてくれ」



 そう言って腕を引かれて教室の中に目を向ける。


 目線の先には古賀が教室の机に鎮座していた。


 それも俺の席に。



「は!?」



 目を見開き声を上げるとこちらに気付いた様子の彼女は、嬉しそうな顔でこちらに駆け寄ってくる。



「始業ギリギリの登校は感心しませんけど…まあ良いです。今日もお弁当持って来ましたよ!」



 上目遣いでそう言うと、弁当が入っているであろう巾着袋を手渡してくる。



「えっなっなんで」


「……覚悟していてくださいって言いましたよね?」



 小悪魔めいた笑みを浮かべながら囁いてくる。


 ただ、よく見るとかすかに巾着袋を持った手も震えて、頬も赤く染まっていることから、実はかなり無理しているのだろう。


 嗜虐心をそそられる態度に、少し意地悪をしてみたくなった。



「いつもおいしいご飯をありがとう。嬉しいよ」



 誰にも聞こえないように小声で、耳元に近付いて話すととっさに顔を赤らめて飛びのく。


 普段は落ち着いたている印象なのに、時折見せる幼さがギャップとなって……なんか良い。



「あああああ、あの!」


「どうした?」


「何でもないです!おいしく召し上がれえええぇぇぇ」



 壮絶にテンパって、そのまま親のようなことを言いながら逃げ出してしまった。


 呆然と立ち尽くすしか無いが、ここが教室の入り口で周りの視線が最高潮に集まっていることを忘れていた。



「ほらみんな何してる席に着けー」



 そこで始業時間が近付いていたため、担任の香織が生徒の波をかき分けて、他のクラスの生徒にも戻るように促す。



「そうちゃん、あとでしっかり聞かせてもらうよ?」


「思ってた以上に面白いことになっているようだな」


「はあ」



 ニヤニヤと友人二人が席から話かけてくるものだから、ため息が漏れ出る。



「よーしおはよう、今日は進路希望調査を提出していない者は出すようにな」



 ようやく始まった朝のホームルームに安堵しながら、2年生になったら進路についても考え始めないとなーとぼんやり考えていた。



「と、まあそんなところで、色々あったようだし、私の話は耳に入らないだろう。1時間目は私の授業だからそれまで自由にしてていいぞー」



 にやりと悪魔のような笑みを浮かべてこちらを見てくる。


 おのれ、あなたはそれでも教師なのか、職務怠慢だぞ!と視線を送るが目線を外してしらばっくれる。くそぉ。



「さーて聞かせてもらおうか、どうなってるんだい?」


「逃がさないからな。おーい誰かドア封鎖してくれー」



 そう言って2つあるドアを即座に封鎖するクラスメイト。


 特殊部隊かなにかですか。



『古賀さんと春日井君って確か義兄妹じゃ?あっでもご両親が離婚したって言ってたし』


『なになに、一つ屋根の下で密かに育んでいた恋が、別居してからはもう隠す必要が無くなって⋯⋯キャアアアなにそれすごい!』



 前に千歳が教室で、古賀と俺の家族としての関係性が無くなったことを、絶叫して漏らしてしまったので、そこから女子達はあらぬ妄想を膨らませる。



『あれほど古賀さんと何も無いって言ってたのに実はコソコソと⋯⋯俺たちを敵に回したってことでいいんだよな?』


『そうだな。まずは弁当を食べることができないように、歯を抜くか』


『だな、先生が用務室からペンチ持ってくるから、ちょっと待っててくれ』



 おいおい男子はクラスメイトに何言ってるんだ!?そして教師の声が混ざっていた気がするが、怖いのでもう考えるのをやめよう。



「あー違う違う。別々に住んで生活能力の無い俺があまりにも可哀想だから、気を遣ってくれただけだから」


「そんな説明で納得するわけないよね?」


「うんうん、無理があるな」



 この状況で俺に救いの手を差し伸べてくれない友人二人は、明らかに頬を緩めて楽しんでいるご様子。



「あーわかったよ、飯は俺からお願いした。ただ他意は無いし、向こうも⋯⋯ない」



 心なしか語尾が小さくなってしまう。



『聞きました?先生?』


『もちろんだ。リア充爆発しろ⋯⋯じゃなくて不純異性交遊だな。停学も検討しなければいけない』



 どこの世界に弁当作ってもらっただけで停学になる学校があるんだよ。


 そんな不毛なやり取りをしていると授業開始のチャイムが鳴る。



「ほらっ先生!授業始めてください!」



 これほどまでに早く授業が受けたいと思ったのは初めてのことだった。


 しぶしぶと言った感じで香織が教壇に立つ。



「そうちゃん、また後で」


「逃がさないぞ」



 スナイパーさながらの鋭い目で見つめてくる二人。


 それは確実に友人に向ける目線では無いからな。


 その後、1時間目の授業は全ての問題を回答させられ気が休まる暇が無く、この教師は校長に密告しようと決意した。



読んでいただきありがとうございます!

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