プロローグ
「あのーめちゃくちゃ見えてるんですけど」
バイト終わりに後ろをちらちらと見ていると、電信柱の陰に少女が一人立っている。
「警察に通報しよっかなー」
少し大きめの声で言うと、小さな影がビクッと揺れる。
でも、男子高校生が女の子にストーカーされていますと言って、取り合ってもらえるのだろうか。
しかも相手は美少女。
黒く長い髪は月光に照らされて煌びやかに光り、均整の取れた目鼻立ちは美人とも取れるが、年相応の幼さが感じられる風貌は、まさに美少女と呼ぶにふさわしい。
なぜわかるかって?
「はぁ」
隠す気があるのか、あるなら相当のお馬鹿さんなのか。
体を隠せば顔が出ていて、顔を隠せば体が出ている。それが見知った顔なので溜息も漏れるというものだ。
道を歩けば男女共に憧れの視線を集めるであろう少女は、今は好奇の視線にさらされている。
おいおい、そんなに見ないでやってくれ。本人は真面目にやってるんだから。
歩みを止めれば足音が止まり、歩き出すとまた人の気配が迫って来る。
「さて、そろそろ声をかけるか」
さすがに自分の同級生、いや違うな、元義妹が醜態を晒し続けるのを止めなければ。
このままでは俺じゃない誰かに不審者として通報されるかもしれないしな。
「なあ、何をしているんだ?」
「ひぎいいい」
おいおい、美少女がスライムの断末魔みたいな声を出すなよ。
ガクガク震えながらも顔を紅潮させて、潤んだ瞳でこちらを見る美少女。
恋する元義妹ストーカーは、俺の後を日々付け回す。
なんでこんなことになってるかは、つい先日の出来事から話をさせて欲しい。
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