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「貴様、覚悟はできてるな?」
俺は女騎士に剣を向けられていた。
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時は少し遡る。
(・・・んっ?)
俺は暗い洞窟の中にいた。
唯一の明かりは、タイマツだった。
(何で、俺はこんなところに・・・?)
記憶が曖昧な俺は、思い出すことができない。
「おい、さっさと起きろよ」
誰かに声をかけられる。
聞こえた方向を見てみると・・・
「なんだよ?」
「うわっ!! ゴブリンだああああ!!!」
目の前には、ゴブリンがいた。思わず、後ずさりをする。
「何驚いてんだよ。お前もそうだろ」
「そ、そんなわけ・・・」
「そこみてみろ」
ゴブリンは洞窟にある水たまりを指でさす。
おそるおそる、俺は近づいてみると・・・
「・・・っ!! 嘘だよな・・・」
「現実です」
ゴブリンが突っ込んでくる。
水面には、ゴブリンの姿が映っていた。
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「ったく、記憶が飛んでいっちまったようだな」
ゴブリンは俺に話をしてくれた。
成人した俺たちは、巣から独立し、しばらくの間協力して生活することになったらしい。
で、独立してすぐ、俺は落ちてきた石に頭をぶつけて、気絶したとさ。
「ここまで、運んでくるの大変だったんだからな」
「悪かった、助かったよ・・・」
(そんな、俺の知らない話をされてもなぁ・・・)
彼を不快にさせないため、とりあえずお礼をする。
「なぁ、俺達これからどうすんの?」
「どうするって、いつもやっていることをするだけさ」
「それって・・・誰かを襲うってこと・・・?」
俺が知っているゴブリンとは、人間の女性にあんなことやこんなことをする下劣な存在だった。
そんなことを俺はできるのだろうか?できたとしても、やりたくはない。
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「ほらっ、気をつけろよ」
俺は洞窟の外に向かって歩いていた。
ゴブリンについて来いと言われたので、そうしている。
これから先が不安だ。
現代生活を今さっきまで送っていた俺が、サバイバル生活なんて送れるのだろうか?
(しかも、人間じゃなくて、ゴブリンになってるし・・・)
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「おぉ・・・」
洞窟を出ると、目の前には森が広がっていた。
「よし、やばそうなのはいないな・・・」
ゴブリンは周りを見渡すと、森の中に進んでいった。
「ちょっ、おいていかないで!!」
慌てて、俺はついていく。
「なぁ、さっきも言ったけど、今から誰かを襲ったりするの・・・?」
「はぁ・・・バカバカしいから無視してたけど、本気で言ってたんだな。
俺たちがそんなことできるわけないだろ」
何ももっていない、ゴブリンは両手を空へ上げる。
(確かに・・・武器も何も持たず、襲うなんてしないよな・・・)
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「ほら、ついたぞ」
洞窟から歩いて、数分のところだった。
果物がなっている木が、ポツポツと生えている。