髪の毛切りたての月曜日
美容院に行った日曜日。
明日学校に行ったら、みんなに何て言われるかな?
あいつは……気付いてくれるかな?
月曜日の朝、自転車で向かった学校。
風で乱れまくりの前髪が気になって、信号で止まるたびに手櫛で整えていた。
学校に着いて教室に入れば、いつものクラスメイトの姿。
「おはよう」と声を掛け合いながら、あいつの姿を探す。
真ん中の列の一番後ろ。
そこには姿はなく、鞄も置かれていない。
……まだか。
少し安心しつつ、何緊張してんのよって呆れてしまった。
窓際の列の一番後ろの自分の席に鞄を置いて、隣のクラスの友達の所に行こうと、後ろのドアに向かう。
「あっ!」
突然現れたあいつに驚き、思わず声を出してしまった。
あいつはワイヤレスイヤホンをしているから聞こえていなかったみたいだけど、目が合って、私と同じように「あっ!」と少し驚いた声を出した。
あいつの席の手前で立ち止まり、
「な、何?」
と、また緊張しつつ聞いてみる。
そしたら、鞄を机に置いてニヤニヤ笑いながら、自分の前髪の前で指でチョキチョキとはさみのように動かして見せた。
すぐに気付いてくれて嬉しい反面、自分でもまだ見慣れていない前髪が、今どう見えているのか気になって、思わず両手で隠す。
その仕草を見て、笑いながらワイヤレスイヤホンを外す。
「何で隠すんだよ」
「切りたてだから恥ずかしいの!」
「似合ってるからいいじゃん」
一瞬しか見てないくせに、と思いながらも、心臓がドキドキと私の全身を震わせるから、何も言えなくなった。
動かない私を不思議に思ったのか、顔を覗き込んできたあいつ。
「照れてんの?」
ちらりとあいつの目を見ると、少し上目遣いになっていて、一気に全身が熱くなった。
今の表情、すっごくかわいいんですけど!
「すぐ気付いた俺、すごくない?」
「……すごい」
「だろ?」と、片手をポケットに入れながら得意げに笑う。
私の頭にポンポンと優しく触れながら横を通り過ぎて、友達の所に行こうとしたあいつが放った、去り際の一言。
「すっげーかわいい」
ドキッとして思わず振り返ると、見えたのは友達に挨拶をしている後ろ姿だった。
「何か顔赤くね?」と、からかわれているあいつを、猛烈に好きだと実感した、髪の毛切りたての月曜日。