表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

髪の毛切りたての月曜日

作者: みみ

 

 美容院に行った日曜日。

 明日学校に行ったら、みんなに何て言われるかな?

 

 あいつは……気付いてくれるかな?

 

 月曜日の朝、自転車で向かった学校。

 風で乱れまくりの前髪が気になって、信号で止まるたびに手櫛で整えていた。

 学校に着いて教室に入れば、いつものクラスメイトの姿。

 「おはよう」と声を掛け合いながら、あいつの姿を探す。

 真ん中の列の一番後ろ。

 そこには姿はなく、鞄も置かれていない。

 

 ……まだか。

 

 少し安心しつつ、何緊張してんのよって呆れてしまった。

 窓際の列の一番後ろの自分の席に鞄を置いて、隣のクラスの友達の所に行こうと、後ろのドアに向かう。


 「あっ!」


 突然現れたあいつに驚き、思わず声を出してしまった。

 あいつはワイヤレスイヤホンをしているから聞こえていなかったみたいだけど、目が合って、私と同じように「あっ!」と少し驚いた声を出した。

 あいつの席の手前で立ち止まり、


 「な、何?」


 と、また緊張しつつ聞いてみる。

 そしたら、鞄を机に置いてニヤニヤ笑いながら、自分の前髪の前で指でチョキチョキとはさみのように動かして見せた。

 すぐに気付いてくれて嬉しい反面、自分でもまだ見慣れていない前髪が、今どう見えているのか気になって、思わず両手で隠す。

 その仕草を見て、笑いながらワイヤレスイヤホンを外す。

 

 「何で隠すんだよ」

 「切りたてだから恥ずかしいの!」

 「似合ってるからいいじゃん」


 一瞬しか見てないくせに、と思いながらも、心臓がドキドキと私の全身を震わせるから、何も言えなくなった。

 動かない私を不思議に思ったのか、顔を覗き込んできたあいつ。

 

 「照れてんの?」


 ちらりとあいつの目を見ると、少し上目遣いになっていて、一気に全身が熱くなった。

 今の表情、すっごくかわいいんですけど!



 「すぐ気付いた俺、すごくない?」

 「……すごい」

 

 「だろ?」と、片手をポケットに入れながら得意げに笑う。

 私の頭にポンポンと優しく触れながら横を通り過ぎて、友達の所に行こうとしたあいつが放った、去り際の一言。


 

 「すっげーかわいい」



 ドキッとして思わず振り返ると、見えたのは友達に挨拶をしている後ろ姿だった。

 「何か顔赤くね?」と、からかわれているあいつを、猛烈に好きだと実感した、髪の毛切りたての月曜日。


  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ