まっしぐら勇者パーティに新メンバーを検討したけどダメだった話
前作『勇敢すぎる勇者さま方、まっしぐらもほどほどにしてくださいと聖魔道士が語る話』をベースとした続きのようなものです。
「皆さま。お話がございます」
野宿が決定した今夜。
焚火を囲い、夕食を終えて一息ついていたわたしたちでしたが、わたしは意を決して切り出したのです。
勇者さまをはじめとする皆さまが一斉にわたしを見ました。
わたしも皆さまをお一人ずつ見渡します。ケガを治しきれず負傷したままの腕や足。今までならこんな状態で放っておくことなんてありませんのに。己の未熟さに申し訳なさが積もります。
ここ数日、強い敵と遭遇することが増えました。それに伴い、戦闘が過激になってきたのです。
もちろん皆さまは敵が強かろうがなんだろうが関係なく勇ましく挑まれるのでわたしも張り切って皆さまを支えてまいりました。ところが皆さまの負傷レベルにわたしの回復が追い付かず、負傷を次へ持ち越してしまうことが多々起こるようになってきました。わたしの魔力が足りず回復魔法をかけきれないのです。
そのことに関して皆さまは特に何もおっしゃいませんが、このまま進んで皆さまを失ってしまうなんてことがあったらと思うとこわくて仕方ありません。
未熟な我が身を晒すようで恥ずかしいのですが、皆さまの安全には代えられません。
「回復魔法に特化した方を仲間に加えませんか」
勇者さま方は一度深く考えられましたが、わたしの意見を聞いてくださり、仲間の募集を始めることにしたのです。
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このような経緯を経て新しく治癒術士の方が加わってくださいました。
本当に回復のみしか扱えませんが大丈夫ですかと心配されておられましたが、むしろ大歓迎ですと太鼓判を押しました。この方はとても正義感がお強く、この世界情勢を憂いておられて、回復しかできないご自身にはどうすることもできないと悩まれておられました。
ですから、勇者一行に加われる機会を得られてとても嬉しいのだと熱弁されておいででした。
その気持ち、わたしはとてもよく分かります。故郷で祈ることしかできなかったわたしには身に覚えのある感情でしたから。
その熱意に勇者さま方も感銘を受けられ、こちらからも是非お願いしたいとおっしゃっておられました。わたしも、これで皆さまのケガを存分に癒し支えられると、安心した気持ちになりました。
新しい仲間を迎え、数日経った日のことです。
最初はわたし同様に勇者さま方の戦闘時の弾けっぷりに驚かれていましたがそれにも慣れていただいたあたりでしょうか。町から町へ移動していた道すがら、ケガをしていた商人の方が倒れていました。
わたしたちはその商人の方を介抱して事情を聞きながら近くの町へ送ったのですが、どうやら大切な荷物を盗賊に持っていかれたそうなのです。商人の方は荷物を諦められたようでしたが、その盗まれた荷物のなかにはお母君の形見の品が入っていたようなのです。事情を聞いたわたしたちは逃げた盗賊からにも荷物を取り返そうと足取りを追おうとしました。しかし、そこに待ったをかけたのは件の治癒術士の方でした。
『私たちは少しでも早く世界を取り戻さなければいけません!寄り道をしている時間などないではありませんか!』
商人の方は気の毒だとは思いますが、私たちは先へ急ぎましょう、だなんて。
残念に思うのはわたしたちのほうです。
せっかく仲間になっていただきましたのに。
わたしたち4人はお互い顔を見合わせて頷き合いました。
「わたしたちはそう考えません。大切な形見のお品、取り戻してきます!」
わたしたちは治癒術士の方を置いて、根城とされている町はずれにある廃家へ向かったのでした。
その後、無事盗品を取り返してご本人にお返しすることが叶いました。
ちなみに治癒術士の方ももうその町にはいらっしゃいませんでした。
一時でもご一緒していた仲間です、あの方にもこの先幸がありますように。
まぁこんなことがありましたので、今もわたしが一人で皆さまのサポートをさせていただいております。
わたしの思いを分かっていただけたのか、前より気持ち冷静に戦闘に挑んでいただけているように感じます。
わたしももっと精進して、皆さまがのびのびと戦えるように頑張りたいと思います。
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