表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

王子、外出する

 ここはアバロニ王国のアルシュロッホ城。


 コンコン、コンコン


 ドアをノックする音が聞こえる。

 部屋にいたパーヴァートは、ドアに向かって声をかける。


「ど……」

 ガチャッ


「お喜びください、パーヴ王子。疫病がおさまってきたので、外出してもよいとのことです」


「あっ、そう」

(そんなことより、ノックする必要ある? ねぇ、ある?)


 パーヴァートは心の中で思ったが、口には出さなかった。エリーナに何を言い返されるか、ちょっと怖かったからだ。


「あれっ? うれしくないのですか?」


「う〜ん、だって外に出ても何もすることがな――ッ!!」


 話している途中でパーヴァートは何かに気づく。


(そうだった! 権造(おれ)がトラックに()かれたとき、たしか買い物してたんだ! 〈高速の騎乗位娘〜特盛〜〉と〈もしも小村優里が僕の彼女だったら〉のDVD、それと〈ミミズ万匹ギチコリDXウルトラハードver.〉のオナホールを買って、誰も体感したことのない“絶頂の向こう側”へ“イク”つもりだったんだ! まさかトラックに()かれて“逝く”とは思わなかったけど)


 パーヴァートはエリーナに質問をする。


「なぁエリー、町にはアダルトショップってあるのかい?」


「はぁ…………あだる……と? 申し訳ございません、そのようなお店は聞いたことがないですね」


 エリーナはまったく知らない言葉に困った表情を浮かべた。


「大人が読む本とか道具とかを売っている店なんだ」


「でしたら、王立図書館や鍛冶屋がございます。私も最近、王立図書館に(かよ)っているんですよ」


「う〜ん、そうじゃなくて……え〜、無いのかぁ……じゃあ、やっぱり外に行かな〜い」


(王子は城下町のことを忘れてしまわれたのかしら? あのとき、エルフの里で頭を打ったから……)


 “頭を打ったせいで記憶をなくしている”と勘違いしたエリーナが心配して声をかける。


「パーヴ王子、城下町に行けば何か思い出すかもしれませんよ」


「え〜っ、めんどくさ――ッ!!」


 パーヴァートはまた何かに気づいた。


(そうだった……今の俺は超男前(イケメン)だったんだ!! ってことは、外に出たらめちゃくちゃモテるんじゃないか!? フッ……まさか童貞を捨てる日が来ようとはな……)


「エリー、俺ちょっと外出してくる」


「えっ!? は……はい」

(突然どうしたのかしら? やっぱり頭を打った後遺症が……)


 ニヤニヤしているパーヴァートを見て、エリーナは心配になってくる。


「パーヴ王子、城下町には公衆浴場がありますが……リムツ様のことをお忘れなきよう、お願いいたします」


「ほへっ? リムツ様って……誰?」


(あぁ……やっぱり、王子は記憶喪失に……実の兄君の名前を忘れてしまわれるとは……)


 エリーナは優しくパーヴァートに説明する。


「リムツ様は、アバロニ王国の第一王子……つまりパーヴ王子の兄君です。私は直接お会いしたことがございませんが、セーリオ王から話を(うかが)っております」


(あ〜そうなんだ。俺、お兄さんいるんだ……)


 パーヴァートは興味なさそうに話を聞く。


「リムツ様はアバロニ王国随一の魔導師でした……ですがある日、公衆浴場の女湯をのぞいているのを見つかり、国外追放となったのです」


「えっ!? それだけで国外追放!? 怖っ! この国怖っ!!」


「パーヴ王子は決して女湯をのぞかないでくださいね、約束ですよ」


「あぁ、わかったよエリー。じゃあ町に行ってくるね」


 パーヴァートは城下町に出かける。


(女湯をのぞけるんだ……バレない方法……か)


 そんなことを考えながら――





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ