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王子、外出禁止令を出される

 ここはアバロニ王国のアルシュロッホ城。


「なんで? なんでナンデ(なん)で!?」


 何やら騒がしい声がパーヴァートの部屋から聞こえてくる。


「ですから、今この城下町で疫病が流行(はや)っております……“疫病がおさまるまで、王子は外出しないように”と父君〈セーリオ王〉より命じられております」


「いやいやいやいや、疫病っていっても大したことはないんでしょ? 大丈夫だって!」


「三ヶ月前にエルフの里を救出しにいって、頭に大怪我をして帰ってこられてから、セーリオ王はとても心配なさっておられます」



 エルフの里の救出のため、アバロニ軍は急いで部隊を送るための準備をしていたのだが、それを待てずにパーヴァート王子は私兵とともに、先に救出に向かった。

 そして大怪我をしてパーヴァートが帰ってきてから、セーリオ王はパーヴァートのことが心配で仕方がないのである。



 エリーナは助けられたときのことを思い出す。


(そのおかげで、私は今こうして命があり、お(そば)でお仕えできているのですが……)


「大丈夫だって! ずっと城の中にいたら退屈だろ〜」


「ダメですよ王子、外に出ないように私が見張りを(おお)せつかりました」


「え〜っ? じゃあ、パンツ見せてよ〜」


「外出と関係ないですね。お断りします……なにか御用があればお呼びください。それでは失礼いたします」


 ガチャッ


 ドアを閉めてエリーナは出ていった。


(エリー……俺が外出禁止令(そんなこと)を守るとでも思っているのか……)


 そっと部屋のドアを開け、キョロキョロと廊下を見回す。


 誰もいないことを確認して、パーヴァートはこっそり階段を降りて一階の大広間まで出る。

 さすがに一階では、警備の兵やほかのメイドたちに出会うが、誰も外出禁止令を知らないのか、挨拶(あいさつ)をされるだけだった。


(たぶんエリーが見張りなんで、兵士やほかのメイドたちは外出禁止令を知らされていないんだなぁ……エリーはやたらとセーリオ王の信頼が厚いからなぁ……)


 パーヴァートは裏門から出ようと厨房の横を通る。


「王子、どちらへ?」


「はぅあっ! エッ、エリー……ちょっと城内を散歩しようと思って……」


 うしろから急に声をかけられたパーヴァートは驚きながら答えた。


「そうですか……では、私もお供いたします」


「いやいや、いいよ。エリーは忙しいだろ?」


「王子……外に出ようとしているのですね……私……私は……」


 エリーナは瞳を(うる)ませながら言った。


「ごめん、ごめんね。ごめんなさい。部屋に戻るね!」


 パーヴァートは慌てて自室に戻る。


(王子……ちょろい……ちょろすぎます。女性の涙を信じてはいけません……そんな純粋さが、王子の良いところなのですが……)


 パーヴァートが部屋に入るのを確認して、エリーナは仕事に戻る。


 自分の部屋に戻ったパーヴァートはしばらくしてから、ふと気づいた。


(あれっ? よく考えたらエルフの里からこの城に来て……そのあと、頭の怪我を治して…………俺、城の外に出たことないわ! いや、そもそも権造(おれ)、仕事と買い物以外は現実世界でも引きこもりだったし……城の外に出られなくても、なんの問題もなかったわ!)


 パーヴァートは、部屋の窓から外を見て独り言を(つぶや)く。


「だから異世界に来たのに、何も話が進まないんだな……だって俺…………引きこもりだもん」


(なんで異世界に転生したんだろう? まぁ、いいか)


 パーヴァートは昼間からベッドでゴロゴロするのであった。





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