エルフ、石になる
「えっ!? オークだけじゃない!?」
パーヴァートはびっくりしてエリーナの顔を見た。
「はい……どうやら町の人々は、石化の呪いで石像にされてしまったようです。この町を襲ったのはオークだけではありません。おそらく……ゴルゴンもいます」
「そんな怪物がこの町のどこかに……」
巨大な怪物を想像してパーヴァートは恐怖で顔が青ざめる。
「ゴルゴンを倒せば石化の呪いは解除されるはずです……んっ? 何か音がします……」
ガサゴソ、ガサゴソ
「王子……隠れてください」
物音に気づいたエリーナは、小さな声でパーヴァートに話しかける。
「2匹のオークが何かをしていますね。荷物を……積んでいるのかしら?」
前方でオークたちがパーヴァートとエリーナに背を向けて、荷車に何かを積んでいるのが見えた。
だがオークの背中が邪魔で、何を積んでいるのかまではエリーナにはよく見えない。
「あっ、あれはフラフィ姫!?」
パーヴァートの言葉にエリーナは驚く。
「えっ!? フラフィ様!? どこにおられるのですか!?」
エリーナの質問にパーヴァートは荷車の上を指さす。
そこには、ふたつ並んだ丸い石が荷車からはみ出していた。
「そ……そんな? まさか、フラフィ様が石化の呪いに……パーヴ王子、本当にフラフィ様なのですか?」
「あぁ、間違いない!! あの完璧な曲線はフラフィ姫のおっぱいだ!!」
(なんで得意げなんだろう……)
エリーナは呆れながら、オークたちを倒す方法を考える。
「王子……オークたちは今、武器を持っていません。私が王子に“静寂”と“敏捷”の魔法をかけますので、オークのうしろから斬りかかってください!」
「えっ!? ちょっと卑怯じゃな……」
「静寂!! 敏捷!!」
パーヴァートが話している途中でエリーナは魔法を唱えた。
(え〜っ!? ちょ、ちょっと待って!? 怖いっ! 怖いよ〜!! 無理無理ムリムリ……んっ? 待てよ……普通なら無理だけど、今の俺の身体能力ならできそうな気がする……魔法もかけてくれたし……いけるかも……いける気がしてきた……)
パーヴァートは剣をギュッと握ると“敏捷”の効果でオークたちの背中にすごいスピードで近づく。
“静寂”の効果でまったく音がしないから、オークたちはパーヴァートに気づいていない。
ズババッ!!
パーヴァートは、あっという間にオーク2匹を斬って倒した。
(ハァハァ……やった! 怖かったけど、あっさり倒せたぞ!!)
「さすがパーヴ王子!」
エリーナが喜んでいると、うしろから声がする。
「ねぇ、エルフのお姉さん」
(少女の声? 石にされていない人が!?)
エリーナがうしろを振り向くと、そこにはエリーナよりも少し年下に見えるかわいらしい少女がいた。
エリーナと少女は目が合う。
「大丈夫? 怪我は……な……い……!?」
エリーナは少女に話しかけながら気づいた。
その少女の髪の毛が、生きている蛇だということに――
ピキッ、パキッ、パキパキ
エリーナの身体が硬い石になっていく。
「パーヴ……王……子……」
「んっ? エリー?」
パーヴァートがうしろを振り返ると、そこには石像になったエリーナが立っていた――




