エルフ、嫉妬する
ここはアバロニ王国の王立図書館。
エリーナは休日なので王立図書館に来て文献を読みあさっていた。
異世界について、だ。
(ふむふむ、ラーメンもメンマも食べ物なのですね。あだる……としょっぷは……どこにも記載されていなかったわ。パーヴ王子は若いのに博識でいらっしゃる。私は130歳なのに何も知らない……恥ずかしい、もっと勉強しなきゃ!)
エリーナが異世界について調べていると、いつもは静かな図書館が今日はなぜかざわざわとしている。
ピョコピョコ
不思議に思ったエリーナは、長い耳を動かして聞き耳を立てる。
「……だから、フラフィ姫がまたこの国に来てるってさ」
「本当なのか?」
「あの美貌と褐色の肌、それに立派な胸は間違いないよ」
ガタッ
思わずエリーナは立ち上がった。
(な、なんですって! フラフィ様がこの国に!? ま、まさかパーヴ王子に会いに来られたのでは……)
エリーナは周りのうわさ話に集中する。
「今、この城下町にいるって」
「また公衆浴場に行かれたらしいな」
エリーナはその情報を知ると、急いで本を片付けて公衆浴場へと向かった。
(どうして? ニ年前にのぞかれて嫌な思いをされたでしょうに……また公衆浴場?)
エリーナが公衆浴場に着くと人だかりができていた。うわさは本当のようだ。
お金を払ってエリーナは公衆浴場の中へと入っていく。
女湯の脱衣所には誰もいなかった。
人だかりは公衆浴場の外だけで、中はあまり人がいないようだ。
エリーナは服を脱ぐと、女湯の戸を開けてそっと浴場を見回す。
数人が湯に浸かっているのだが、明らかに周りの視線がひとりに集中していた。
その視線を一身に浴びた女性の胸には……何か巨大な褐色のボールがふたつ、湯にプカプカと浮いている。
エリーナは思わず自分の胸を見た。
膨らみかけの小ぶりな胸……
(あ、あれは……私の目がおかしいのでしょうか? まさか、まさか、あれが胸なの!?)
エリーナは、その褐色のふたつのボールを持つ女性をまじまじと見つめる。
綺麗な長い銀髪、美しい顔、褐色の肌。
(間違いない、フラフィ様だ。きっとパーヴ王子に会いに来られたんだ。王子はきっとフラフィ様を見たら一瞬で好きになってしまわれる……なぜだろう? フラフィ様を王子に会わせたくない……いえ、私はパーヴ王子にお仕えする身。王子の幸せを願うべきなのに……なんだろう? このモヤモヤとした気持ちは?)
エリーナは自分の心がわからないまま、自分も湯に浸かった。
そして、気持ちよさそうにしているフラフィをチラチラと見る。
すると、フラフィと目が合ってしまった。
目が合うと、フラフィは何かに気づいてエリーナに近づいてくる。
エリーナが緊張していると、フラフィが目を輝かせながら話しかけてきた。
「あなたエルフなのね!? 初めて見たよ! うわさ通り、エルフってとっても美しいのね!」
「あっ、ありがとうございます……フラフィ様……」
「ん? どうしてボクの名前を知ってるの? ん〜まぁ、しょうがないよね。この国では銀髪も褐色の肌もめずらしいみたいだし……やっぱりバレるよねぇ」
「いえ、胸が大きすぎ……」
と、思わず言いかけてエリーナは慌てて話を逸らす。
「フラフィ様はこのアバロニに、いったいどんな御用で来られたのでしょうか?」
「ないしょでパーヴ様に会いにきたんだ。旅で身体が汚れちゃったから、この浴場で身体を綺麗にしてから会いに行こうと思ってさ」
フラフィは少し照れながら言った。
「そう……ですか」
エリーナは下を向いて、自分の小ぶりな胸を見ながら悲しそうに答えた。
「実は私……エリーナと申しまして、パーヴ王子のお付きのメイドをしております。王子のもとへご案内いたしましょうか?」
「えっ!? 本当に? うれしい! 助かるよエリーナ!」
エリーナはなぜ自分の小さな胸が痛むのか、わからないままフラフィをパーヴァートのもとへ案内することにした。




