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迷子

作者: 紅白

僕が見たその夕日は

だいだい色に燃えて

静かに強く輝いていた

僕が見たそのそらは

あかい色に輝いて

静かに強く燃えていた

ゆっくりとした足取りで

地球はまわり太陽は沈んだ

夕日が残したお日さまの彩りは

ぜいたくにたくさんこぼれていた

風が漂う夕暮れの浜辺は

やわらかくやさしく笑っていた

僕はその中におぼれて

太陽の名残に包まれた

涙を吐き出してそっと笑って

僕は東の都会(ふるさと)に帰った


僕が見たその月は

灰の摩天楼に切りとられ

静かに静かに泣いていた

僕が見たそのそらは

しろい電気に照らされて

静かに静かにうめいていた

ゆっくりとした足取りで

地球はまわり星もまわった

都会が吸ったお星さまの香りは

ぜい弱にかすかにこぼれるだけ

人が溢れた夕暮れの交差点は

無関心に賑々しく笑っていた

僕はその中で窒息して

人工の雑踏に巻かれていった

涙を吐き出して咳き込んで

僕は西の山を目指した


僕が見たその森は

宵の闇に沈みこみ

静かに強くそびえていた

僕が見たそのそらは

黄色のほたるに照らされて

静かに強く立っていた

ゆっくりとした足取りで

地球はまわりほたるは遊んだ

森に生かされたほたるの暖かさは

そっと優しくこぼれていた

月が抱いた夜の森は

やわらかくやさしく笑っていた

僕はその中で踊って

木々やほたるとおはなしした

涙を忘れてたくさん笑って

僕は後ろを振り返った


僕が見たその森は

夜の闇に沈みこみ

静かに強く迫ってきた

僕が見たそのそらは

木々の闇に覆われて

静かに強く迫ってきた

いつしかほたるもいなくなり

僕は独り森の中

暗くて暗い森の中

街の光を思い出し

必死で雑踏を捜し回り

ようやく見つけたふるさとは

無関心に賑々しく笑っていた

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