第1話 異世界に転移しました。
よろしくお願いします。
ボクの名前は兎野カナタ。
長い睫毛、くりくりの大きな瞳、陶器の様な白い肌、赤い唇にピンクのほっぺ。
少しくせっ毛のあるショートカットが悩みの、高校二年生。
道を歩けばナンパされ、学校の靴箱には、男子生徒からのラブレターがびっしり。
アイドル級の愛らしさから、ファンクラブも結成されている。
だが、男だ。
少し気が弱く、緊張するとプルプルと震えてしまう。涙目の上目遣いに胸を撃ち抜かれた者は数知れず。
華奢な肩を寄せる姿は、思わず抱き締めたくなってしまう。
だが、男だ。
そんなボクが、異世界に突然転移してしまったのは、コンビニに入った瞬間だった。
自動ドアを通り抜けた先は、見渡す限りの草原。思わず振り返るが、建物は消え失せていた。
「ここは、もしかして異世界…?!」
ネット小説を読むのは大好きだか、まさか自分が体験してしまうとは思わなかった。
まずは、異世界転移した時の基本中の基本を叫ぶ。
「ステータスオープン!」
名前 カナタ・ウサギノ
レベル 1
種族 人間
体力 20
魔力 200000
速さ 20
命中 20
運 20
スキル
鑑定 アイテムボックス 魅了
称号
異世界人 アイドル級男の娘
い、色々ツッコミたい所はたくさんあるが、まずは…
「アイドル級男の娘って何だよ〜〜〜!」
異世界転移しても、可愛い系男子は辞められないようです…。
トボトボと草原を歩きながら、改めてステータスを確認する。
「魔力が凄く高いっぽい…!」
憧れの魔法を使えるみたいで、胸がドキドキする。
でも、スキルには鑑定とアイテムボックスと…魅了しか無い…炎を操る大魔導士にはなれないみたいだ。
体力が20のボクには、ムキムキの剣士も無理そう…。
「ひょっとして今、魔物に襲われたらヤバイ?!」
サーッと青ざめるボクの目の前に、無情にも牙を剥き出したホーンラビットが現れた。
勝てない。
体力20のボクは、一撃でも当たったら死にそうだ。
「だれか助けて…!」
ぎゅっと目を瞑り、衝撃を覚悟した、その時。
ザンッと言う斬撃音と共に、銀色の鎧に身を包み、白馬に乗った騎士が現れた。
「大丈夫だったか?」
金髪碧眼高身長。耳の長いエルフが、馬から降りて近付いて来る。
ヘナヘナと座り込んでしまったボクの腰を持ち上げ、お姫様抱っこしてくれる。
見つめ合う二人…。
まごう事なき、白馬に乗った王子様と、ピンチを救われたか弱き美少女…。
だが、残念ながらボクは男なのだった。