第4話 いつのまにやら1歳児
俺が生まれて半年がたった。
「ライちゃんそろそろお外にでてみようか。」
「う?」
外?おお外!そうか俺ももうお外にお出かけできる年齢か!いやあ時が立つのは早いねえ。
正直外にはずっと出てみたかったのだファンタジー世界の外!
思っただけでわくわくするじゃないか。それに半年間ずっと家の中に引きこもりだとね…どうしてもヒマになるんだよね。
テレビや漫画でもあればいいんだけどウチにあるのはママンのおっぱいと
メイドのおっぱいぐらいだからね。
俺にも魔法が使えないかと精神を集中してみたり手のひらを前に出してやーと言ってみたりいろいろ試したが結局魔法は撃てなかった。まあ俺はまだ0歳だ。
焦る事はない。そのうち誰かに魔法を習えばいい。
「外に出るなんてとんでもありません!」
そんな事を考えているとリリィが口を出してきた。
「どうしたのリリィ?」
「外に出るだなんてライヤ様にもしもの事があったらどうするんです!?人さらいが現れたらどうするんです!魔物が出たらどうするんです!」
「そんなに心配しないでもちょこっと庭に出るだけよ。」
うむ。前々から思っていたのだがリリィはちょっと過保護すぎるな。
俺に対して甘いのはいいんだけどな。最初に俺が喋った言葉がリリィの名前だったのが効いているのかな?
「ライちゃんもお外に出てみたいわよね?」
「そとぉーでゆー」
ママンがそういってきたのでうんうんうなずきながら外に出ると言う。
「ほら?ライちゃんも外に出たいって言ってるわ。」
「う、うーん…ライヤ様がそういうなら…」
やった。いやぁファンタジー世界の外。楽しみだなぁ。
俺はつい最近、はいはいができるようになったばかりなので母に抱かれて外に出る。
ちなみに初めてはいはいできるようになった時の二人のはしゃぎようときたら…
おっとこの話はまあいいか。
とにもかくにも俺は生まれ変わって初めて外に出るのだ。緊張するなあ。
母がドアを開ける。
「あうっ」
おお!太陽の光がまぶしい…
目を開けるとそこは…
うん…庭だ…。
草木が少し生い茂っていて柵で囲まれている。庭の広さはドラ○もんに出てくる空き地ぐらいだ。
うーんあんまりファンタジー要素ないなぁ…きょろきょろ周りを見てみる。
他に家が見当たらないなあお隣さんとかはないのかしら?
そう思っていたら何100メートルか先にちらほらと家が建っている。
やけに遠いお隣さんだなぁ。
どうやら俺が住んでいる場所は町ってよりは村に近いらしい。
「どうライちゃん。初めてのお外は?」
「うーあーうー」
「うふふ、喜んでるみたいですね。」
何はともわれ初めての外だ。新鮮な空気をいっぱい吸おう。
しばらく日向ぼっこしたあと家の中に戻ってママンの母乳を吸い、眠くなって眠った。
いやあ。マジで赤ん坊ってのは気楽でいいなあ…。
そんなこんなで時が流れ俺は1歳の誕生日を迎える。
「お…お…おお!」
「きゃあ!あなた、ライヤが立ったわ!」
「うむ、見ている。」
「ふぁああああ!!ライヤ様!ライヤ様が立った。」
ふふふ、驚いているな皆。実はこの日の為に俺は立って歩く練習を毎日こっそりしていたのだ。
今日は俺の誕生日。父さんも帰って来て久しぶりの一家団欒だ。
にしても俺が立って歩いただけでこの騒ぎよう。
気分はまるでクラ○だね。
「あるけたよー」
「はい!見てました!このリリィ。今のライヤ様の勇士、しっかりと目に焼き付けております!」
「ライちゃんすごいわ!ほら、ママのところにおいで。」
ママンが両手を出してこいこいしてるのでその胸に飛びついた。
「ライちゃんよくできましたぁ。よーしよしよしよし。」
ムツ○ロウさんばりに頭を撫でられる。うむ悪くない。
「ぼくあるけるようになったんだよー」
実は結構前から歩けるようになっていたんだけどほめてほめてとママンにすり寄る。
前世の記憶を持つ俺は1歳になるころにはもう大分しゃべれるようになっていた。
「ライヤはちょっとみない間にすごく成長するなぁ。」
父さんがしみじみとしながらいう。あんたまだ若いのにそんなジジ臭いこと言うなよ。
息子はまだ1歳なんだぜ?
「ライヤ様!リリィにも!リリィのところにもおいでください!」
リリィが放送ぎりぎりのにやけ顔で俺を呼ぶ。
正直そんな顔されたら近寄りたくないのだが今日は俺の誕生日。無礼講だ。
俺はよちよち歩きながらリリィの元に向かいリリィに抱きつく。
「きゃー!ライヤ様ぁー!」
リリィが俺を強く抱きしめる。ちょっと苦しいがおっぱいが柔らかいので許してやるとしよう。うはっ!おっぱいおっぱい。今日は無礼講なのだ。でへへ。
「むう…ライヤ…お前絶対将来スケベになるな。」
オヤジがそうつぶやく。すいません現在進行形でドスケベです。
「あなた、1歳の子に何を言ってるのよ。うふふ。」
「1歳!そうですさっそくライヤ様のお誕生日会を始めましょう!」
「そうね。ライちゃんそれじゃあさっそくお席について。」
「わかったー」
俺達は全員テーブルの席についた。いつもなら俺の席は母さんの隣なのだが今日は特別だ。赤ちゃん用のイスをテーブルの端っこに移動させ、俗にいうお誕生日席に俺は座る。
「それじゃあライちゃんお誕生日おめでとう!」
「おめでとうライヤ。」
「おめでとうございますライヤ様!」
するとリリィがでっかいケーキをテーブルに置いた。
この世界でも誕生日はケーキで祝うようだ。ろうそくは無いようだが。にしてもこのケーキ…でかすぎだろ!立った時の俺よりでかいんじゃないだろうか。リリィ、気合入れ過ぎだろ。ウチはリリィを入れて4人家族なのに食いきれるとはとても思えない。いや、こういうのは祝う気持ちだから別にいいのか?
「ちょっとこのケーキでかすぎないか?」
「そうねぇちょっとこれは大きすぎるわね…」
あ、やっぱりでかすぎるんだ。
「何を言うんですか!ライヤ様のお誕生日なんですからこれくらい当然です!本当はケーキの上の部分をライヤ様の顔のようにデザインしたかったんですが…ちょっと今の私にはライヤ様の可愛らしさを表現しきる事はできませんでした…。」
うん。表現しなくてよかった。さすがに自分の顔を切り分けるというのはどうかと思うし、にしてもこのメイドは自重というのを知らないんだろうか?
確かこの世界でケーキといったらかなりの高級品だったはずだが…。
「それじゃあライちゃんに誕生日プレゼント渡しちゃいましょう。」
「おーぷれぜんとー」
プレゼント!なんて良い響きなのだろう。何かなぁ楽しみだなぁ。
「それじゃあママからはね…じゃーん!新しい毛布よ!」
「リリィからはライヤ様にぴったりの大きさの靴をお送りします。」
うん…まあ1歳の誕生日プレゼントなんてこんなものだよね。いや嬉しいんだけどね。
正直言ってもっと異世界ファンタジーっぽいものを期待していた。魔法道具とか。
「俺からはこれだ。町の市場で絵本が売っていたから5~6冊買ってきた」
絵本?本!?おおやった!もしかしたらこの絵本を通してこの世界の事を学べるかもしれない!うん今回の誕生日、MVPはパパンだね。久しぶりに会ったから正直顔とか忘れてたけど、ごめんね。
なにはともわれ皆俺の1歳の誕生日を祝ってくれている。非常にありがたいことだ。
「ぱぱ、まま、りりー、みんなありがとー」
にっこり笑ってライちゃんスマイルを浮かべると皆もにこにこ笑ってくれた。役1名は鼻血を出しながら悶えている。
なにはともわれ俺の1歳の誕生日は無事に終わったのだった。
今のところ毎日更新していますが基本更新は不定期です。