表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
割りに合わない家族  作者: 白菜
第一章
7/24

第六話

少し遅れた上に若干暴走気味ですw

僕達が向かったのは最近、隣町に建設された、レジャーランドにある大型のプールエリア。


中に入ると、何種類かのウォータースライダーや流れるプールと施設は充実していた。


「初めてここに来たけど……さすがにレジャーランドだけあって、客が多いなぁ」


もしもここで誰かとはぐれたら探すのに苦労しそうだ。

そうならない為にも僕は皆に注意しようと思ったんだけど……。


「にゃははははっ! プールだー! (ザッバーンッ!)」


とてもじゃないけど、聞きそうにない奴が一人いた。


赤いビキニを着た由々は、プールサイドに着く度、準備体操もしないで、即座にプールに飛び込んだ。


僕は頭を抱えながら、由々に無駄だと分かってる注意をする。


「由々! プールに飛び込まない! 他の客に迷惑でしょ!」


「今の私を止められるのは誰もいないよ! 邪魔をするなら……突撃あるのみだよ! にゃははははっ!!」


「って、ビート板を投げないでよ!? 危ないって!」


プールに着いてからの由々の元気さは増々、増加し、リリサなんか目じゃないくらいに暴走をしていた。


「リリサより手が妬けるって……どれだけ子供なんだよ由々は……」


「まぁ、いいじゃありませんか。今日くらい羽目を外しても」


「由々は常に外してる気がするけどね……」


「そうですか? もしかしたら羽目を外すともっと元気になったりするかも知れませんよ?」


「冗談でも止めてよ……それより、孝一」


「はい、何でしょうか?」


「どうして水着の代わりにフンドシを締めてるのかな?」


僕の隣に立つ孝一の格好は無印の白いフンドシを締めているだけと、今にも他の客の悲鳴が上がりそうな変態スタイルだった。


そんな僕の問いに孝一は平然と答えた。


「フンドシは紳士の嗜みですから」


「嘘だ! 絶対嘘だ!」


恥じるどころが、その自分の格好に誇りすら感じている孝一。


変態って怖い……。


さすがに孝一の格好は子供の教育上、あまり良くないものなので、リリサには目の届く範囲で自由に遊ばせている。


この判断は自分でも懸命なものだと思ってる。


「ふぅ、蒼波君はどうしてもこのフンドシが気に入らないようですね……」


「いいから孝一、早く水着に変えてきてくれない?」


目のやり場に困るから。


「仕方ありません、ここは自分の最終形態もっこりを見せるしかないようですね……」


「見せなくていいよ! というかなんでそうなるの!?」


「(キュッ)分かりました。今、準備をしますので、しばらくお待ちください」


「今、フンドシを締め上げたよね!? 何をするつもりなんだ!」


「あ、そこの美しいご婦人方。一緒にフンドシを締めませんか?」


「セクハラするな!」


「……(キュッ)」


「孝一!? そんな、今まで見た事ないような爽やかな笑顔を浮かべてどこに……って、どうしてフンドシを締め上げたの!? なんか危険な香りがプンプンするんだけど!?」


これはやばい、と僕は本能的にそう感じた。


そして、孝一は予想通り由々以上の暴走した。


孝一らマトリックスのようにブリッジをしながら、自分の最終形態もっこりを見せつけるようにして、女の子達に向かって高速移動をする孝一。


「あっはっはっは! 自分こそが神です! 見なさい! 自分の後光をーーーー!」




「「「きゃああああっ!! 変態ぃーーーーっ!!」」」


悲鳴を上げる女の子達。


孝一は女の子達の目の前でフンドシをさらに締め上げる。最低だ。


「ほらほら見なさい! そして叫びなさい!貴方達はこの最終形態もっこりの前にひれ伏すのです!」


フハハハハ! と高笑いを上げ、勝利を確信した孝一。


その孝一の前にさすがに悲鳴を上げる女の子達に気づいたか、監視員が駆けつけた。


今の女の子達には監視員がヒーローに見えるに違いない。

全員が監視員に期待を寄せている。


「何をしているんだ君!? 早くその変態行為をやめなさい!」


「すみません、それは無理な相談ですね」


「なっ!? 君がやってる事は犯罪だ! こちらは警察を呼んでも構わないのだぞ!」


監視員の言葉に「そうよ!この変態!」「大人しく捕まりなさいよ!変態!」など、女の子達から非難の声が上がる。


だけど、孝一はそれでも動じず、ブリッジをしたまま不敵に笑うだけだ。


「な、何がそんなにおかしい?」


そんな不気味な孝一に少しだけ後ずさりする監視員。


「警察? 犯罪? ――自分にそんなもの関係ありませんね」


ゆらり、とブリッジを止め、立ち上がる孝一。


その孝一の目は何があっても自分はこの意思を貫き通すと、そう語っていた。


「人に何と言われようが……例え、自分がどうなろうが……関係、ないんですよ……!」


そして、孝一は自分のフンドシを最大限まで締め上げ、自分の思いが届けと言わんばかりにシャウトした。





「自分は……! 変態ゆえに駄目と言われると逆にやりたくなるからですッ!!」



「「「………」」」





あー……うん。コイツ、もう駄目だわ。


あまりの孝一の台詞に何も言えないでいる監視員と女の子達に向かって、今度は尻を見せつける孝一。


再び、悲鳴が上がった。


「だから自分は変態行為を止めません! いえ、止められません! 変態である事が自分の使命であり、目的であり、アンデンティティなのですから! さぁ、女性方! もっと悲鳴を! もっと自分を――ぶべしっ!」


あ、殴られた。


孝一を殴ったのは一人の大人の女性。

それが引き金になったみたいで、女の子達が一斉に孝一を殴りにかかった。



「死ねッ! 変態!」「気持ち悪いのよ!」「さっさと帰りなさいよ!」「二度と顔を見せないで!」「くたばりなさい!」



殴打、蹴りつけ、罵倒の嵐。


僕はそれを見て、これはやり過ぎじゃないかと思い、止めようとしたんだけど、孝一が恍惚の表情を浮かべているのを見て、やっぱり止めた。




その後、女の子達の暴行は二、三分続き、最後は監視員に止められ、孝一は出禁を喰らう事になった。


僕は退場する時の孝一の満足気な顔を一生忘れられないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ