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割りに合わない家族  作者: 白菜
第三章
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第十八話

孝一の家から出て行った後、事故について調べるために警察署に来た僕と部長。

孝一達が由々とテレサさんを見張っている間に早く調べ終わさないと……。


少し慌て気味で資料を読んでいく僕の横で膨大な資料を坦々と読んでいく部長。

正直、凄いスピードだ。


「……違う、これでもない」


部長はそんな事をブツブツと呟きながら資料を投げ捨てる。

お目当ての情報が手に入らないからイラついているのだろうか。

……部長がこうして頑張っているんだ。

僕も頑張らないとな。


まずは事故の資料を確認しようと、孝一から借りてきた資料に目を通し始めた。



『事故発生日 六月 十七日。

事故発生時刻 午後五時二十三分。


被害者は二人。

奏瀬 理奈さん(15)と中村 香奈美さん(16)。

同じ南高の生徒であり、同じ部活の先輩後輩の関係でもあった二人。


事故は中村 香奈美さんが乗っていたバイクの不具合(エンジンとタイヤに異常があったものと考えられる)によるバイクの転倒で不運にも事故現場に偶然居合わせた奏瀬 理奈さんはその転倒に巻き込まれ、二人とも大怪我を負った。


中村 香奈美さんは左足を複雑骨折の上、全身に打撲を負い、奏瀬 理奈さんはバイクの破損した破片が声帯を傷つけ、声が出なくなってしまった。


第一発見者は奏瀬 理奈さんの友人である綾崎 由々さん。

綾崎さんの証言によると、当時の事故現場は相当悲惨なものであったらしく、被害者が友人であった事からもショックで心を病ます程だった。

バイクに細工をした形跡など、人為的な事件の可能性も浮かび上がったが、現場の状況、生徒や教員の行動から見ても不可解な点はない事から事故だと断定した。』



読み進めていく内に手に汗が滲む。


「バイクに細工……!?」


これって、かなり重要な事が書かれてないか!?

もしそうなら……!


「部長! ちょっとこの資料を───」


「バイクに細工をした、という事についてなら既に調べているが何の用だ?」


「いえ、何でもありません」


そうだよね。

僕でも分かる事が部長に分からないわけがないよね……。


「……資料から分かるが、状況的に中村のバイクに細工出来る奴は誰一人いなかったわけでもない」


「細工を出来る奴がいたんですか? まさか……」


「綾崎ではないぞ? 綾崎にはアリバイもあるみたいだからな。

まぁ、その人物の可能性はないとされていたから捜査からは除外されていたがな」


「なるほど、でもあくまで可能性だけでないわけじゃないんですよね? なら……」


「かもしれんな。……あとはこっちの情報だな」


これを見ろ、と部長の携帯なのか赤い色のシンプルな携帯を部長が差し出してきた。


「棡原後輩もあっちで出来る限り情報を集めているらしくてな、ついさっきこんな情報が届いた」



『綾崎さんと同じ部活の同学年である生徒からの情報です。


中村さんは当時、秀でた才能を持つ奏瀬さんに嫌がらせをしていたそうです。

レギュラーを後輩に取られるのが嫌だったから、と語っていたそうですが、とにかく奏瀬さんはかなり陰湿な嫌がらせを受けていた事は、確かな事らしいです』



「……この嫌がらせに友人である綾崎が中村がやった事に気づいていたなら、あるいは」


「その仕返しに由々がバイクに細工をする事を考えてもおかしくはない、ですか?」


「そう考える事も出来るな」


その物言いに、それはないと叫びたくなった。

落ち着け、由々がやったという証拠はないんだ。

アリバイも部長によればあるんだ。

由々が犯人なわけがない。


「ふむ……あと少し、あと少しなんだが……」


うーむ、と顎に手を当て唸り出す部長。


もしかしたら部長は既に何かを掴みかけているのかも知れない。

部長は僕よりも頭が良いから、どこぞの探偵みたいにズバズバと解決させてしまうのかも……。


けど、僕にだっては意地はある。

部長一人だけに任せて、問題を解決させた気になるなんて出来ないし、何より孝一の家であそこまで言っておいて格好がつかない。


「だけどやっぱり難しいな……普通の一般の高校生にこんなの見せられても何がなんだか分かるかって……ん?」


ふと、床に落ちている資料が目に付く。

何故だか僕はそれが無性に気になり、拾い上げ、文を目で追った。



「……これって」


えっと……自分で言うのもなんだけど、非常に都合のよ過ぎる展開で多分、僕はこの事故の重要な資料を手に入れてしまった。

お約束、という奴だろうか。



数分後、僕達は再び孝一の家へと戻る事になった。

もちろん、今度は事故の真相を手に入れて。

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