第十五話
投稿が遅れすぎの作者からの一言です。
今季アニメって凄く面白いですよね☆
……すいません、はい。
さっきより人が多い気がする出店の通り道で僕は人をかき分けながら必至で前に進む。
色んな人にぶつかっても、怒鳴られても、関係ない。
今はそんな事を気にしてる場合じゃない。
どこだ、どこに行ったんだ────
「由々! いるなら返事して!」
人目を気にする事なく叫ぶ。
けど、人波の中から返事を返す人はいない。
先程、由々が落とした携帯でリリサから伝えられた内容────
『……わたし達が蒼波の事で心配していたら、蒼波が女の子をおんぶしているのを見て……』
「その時、由々がおかしな様子になって何処かに行ったんだね?」
『……うん。原因は多分、蒼波といた女の子だと思う』
「女の子……? テレサさんか!」
『……お願い、蒼波。由々を──』
「分かってるよ。今から僕は由々を探しに行く。リリサはそこから部長のいる出店に向かってくれる? 多分、事情を説明すれば保護してくれるから」
『……分かった。待ってる』
「ごめん。折角の花火大会がこんな事になっちゃって」
『……別にいい。それより早く由々を探して。由々、何でか分からないけど、泣いてた。苦しそうだった……』
「泣いてた? 由々が?」
『……呼びかけても、わたしの声も何も聞こえてないみたいだった。あんな由々初めて見た』
「……」
「僕はともかく、リリサに心配かけて……! 相変わらずのトラブルメーカーを発揮してるなよ! 見つけたら絶対文句を言ってやる!」
息を荒くして、辺りを見回す僕。
何やら由々の様子がおかしかったらしいし、ほっとくと何をしでかすか分からない。
早く探さないと……。
その時、僕の目にふと、ある人物が目に映った。
あれは……テレサさん?
向こうもこっちに気づいたようで、目を丸くし、驚いた表情をしながら、背を向ける────って、どうして!?
何で逃げるの!?
意味が全く分からないけど、由々の事をテレサさんが何か知ってる事は確かだ。
もしかしたら居場所も知ってるかもしれない。
僕は一目散にテレサさんを追いかけた。
「待ってよ! テレサさん!」
「……!」
逃げるテレサさんを必死で追いかける僕。
テレサさんは意外にも足が早かったけど、草履を履いていたからか、多少時間がかかったものも追いつく事が出来た。
逃げるテレサさんの腕を掴む事が出来たのは出店から少し離れた、公園でだった。
「……!」
テレサさんは僕に掴まれた手を振り払おうと腕をぶんぶんと振るが、当然、離すわけにはいかないので、僕は振り払われないようにテレサさんの腕を掴む手の力を強めた。
もしテレサさんが声を出せたなら、嫌っ!と拒絶するように叫んでいたかもしれない。
そのくらいテレサさんの様子はおかしかった。
「テレサさん! 僕の話を聞いてよ!」
「……!」
狂ったように首を横に振り、更に腕を強く振るテレサさん。
さっき僕が見ていたテレサさんの姿がまるで見られない。
まるで何かに怯えてるみたいだ。
怯える?
どうして?
何に?
僕が思いつく理由は一つしかなかった。
「……綾崎 由々」
「!?」
僕がその由々の名前を呟くと、テレサさんはぷるぷると体を震わせたと思ったら、その場に膝をつけてしまった。
やっぱり────
「テレサさん、君は由々の知り合いなの? 由々に怯えるのは君と由々に何かあったからなの?」
僕が確信をつける為、テレサに問いかけたその時。
突然、僕の顔に眩しい光が当たったと思いきや、怒声に似たはっきりした声が聞こえた。
「そこの男! 一体そこで何をしてるんだ!?」
警察だった。
しかもどうやら僕がテレサさんを襲っているのだと勘違いをしているようで、僕を睨みつけている。
このまま捕まえられたら洒落にならない、そう思った僕が警察に弁解をしようと前に歩み寄った時、出来た隙を見逃すわけもなく、テレサさんが公園から全速力で逃げ出した。
「あ!」
僕が声を上げた時にはもう遅かった。
僕も急いで追いかけようとすると、案の定、前を警察に塞がれてしまった。
「どいて下さい!」
「待ちなさい君! 今、何をしようとしていたんだ!?」
「何もしてませんよ! だから早く追いかけさせて────」
僕の弁解も虚しく、警察に羽交い締めをされ抑えこまれてしまう。
「テレサさん! テレサさん! くそっ……!」
ああ、このまま何も聞けないまま、逃がしてしまうのか、と歯を噛み締めた時。
今度は聞き覚えのある声がした。
「────その人を離してやって下さい、花立さん」
逃げる経路を塞ぐようにテレサさんの前に立ち、ビクつくテレサさんの前でいつも通りのポーカーフェイスを保つのは────
「何か大変な事になってるようですね、青海君」
何故かぐったりと眠ってるように目を閉じている由々を抱える変態野郎の姿がそこにいた。
「孝一!? どうして由々を!?」
「どうしてと言われましても、出店の途中で倒れている知り合いの女の子がいたらセクハラと同時に助けるに決まっているじゃありませんか」
何をそんな事を、と当たり前のように言う孝一。
セクハラは必要ないだろ、とツッコミたい所だったけど、この場の雰囲気に合わせ、そこは自重。
「青海君、そこの美人さん。二人には色々と説明を聞かせて欲しいのですが、よろしいですか?」
孝一は未だに僕を抑えている警察に離してやって下さい、と一声かけると僕ら二人にそう言い放った。
おずおずと頷く僕とは反対にテレサさんはまたも逃げ出そうと孝一がいる方向とは逆に逃げようとした。が────
「逃げないで下さい」
「!?」
反応した孝一が素早く、テレサさんの前に回りこむと、腕をしっかりと掴んだ。
「少し時間を頂きます。尚、反論は認めませんので、先に謝っておきます」
瞬間、孝一が放った拳がテレサさんの腹に叩きこまれる────って、ええっ!?
腹を抑え、倒れこむテレサさんを孝一が優しく抱える。
「な、何やってるの孝一!?」
「気絶してもらっただけですが何か?」
「いや、それ、お前…はぁ……」
そんな漫画みたいな事を実行する孝一に僕はため息しか出ない。
というか、意外に容赦ないね……。
「場所を変えましょう。 自分の家でリリサちゃんと部長さんも待ってるはずです」