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割りに合わない家族  作者: 白菜
二章
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第十三話

しまった、と僕は後悔した。



部長に会ってからしばらくして、僕達はそのまま出店を楽しむ事にしてしばらくの間、適当に回ってたんだけど、僕はそこで型抜きをやっている店を見つけてしまったのだった。


財布が空同然だった僕はもちろんそんなチャンスを見逃すはずもなく、すぐさま型抜きを20枚程購入、そこからはチマチマとした作業に没頭し始めた。


型抜きは僕が子供の頃からやっていたから、そういった技術お手の物だ。

成功するのは勿論、デコピンで弾いて速攻成功させるなど荒技を繰り返し、お金を稼ぐに稼いだ。

……と言っても、祭りの屋台だったし、せいぜい数千円程度だったけどね。

それでもこの出店で好き放題出来るくらいだけど。


それは置いとき、僕が後悔しているのはリリサと由々の二人の事だ。


型抜きに没頭する僕に見学するという選択は二人には無理だったようで、二人でどこか他の場所に行ってしまったようだった。


その後、型抜き20枚クリアを成し遂げた僕は二人がいなくなった事にようやく気づき、急いで由々の携帯に連絡したものも、周りがうるさくて聞こえないのか、それとも電源を切っているのか繋がらなかった。


そんなわけで一人ぼっちで流れる人波の中、二人を探す羽目になった僕。


出店もそこまで出てないから探す範囲が狭くてすぐ見つかるかと思ったんだけど……人が多いからか、未だ見つかってない。


「リリサー、由々ー、どこにいるのー?」


僕はあせる気持ちを抑えつつも、呼びかけながら辺りを見わたした。


うーん、返事がなさそうだし、この辺にはいないのかな?


「あの辺とか探してみようかな……って、わっ」


不意に正面からドンッと衝撃を受けて、僕は尻もちをついてしまった。


どうやら前を向いてなかったからか、前から来る人に気づかなかったみたいだ。

僕と同じように尻もちをついた妙に前髪が長い僕と同じくらいの年の女の子が目の前にいた。


「痛てて……あっ、ごめん。前を見てなくて……」


「……」


立ち上がりながら謝る僕に申し訳なさそうに視線を送る女の子。

人見知りだからか、声は出せないみたいだ。


女の子も自分も悪かったと言うように首を横に振り、浴衣を整えながら立ち上がろうとして――その場でうずくまった。


その様子に僕は慌てて女の子に駆け寄った。


「ど、どうしたの!? まさかどこか怪我とかさせちゃった!?」


「……」


ぶんぶんと首を振る女の子。


「? 違うの?じゃ、何で……」


首を傾げる僕に女の子が足元に指を差す。


これは……草履?


「もしかして……草履の鼻緒が切れちゃったの?」


「……(コクリ)」


困った顔して頷く女の子。


そうだよね……このままじゃ歩く事も出来ないし。

今のは完全に僕が悪かったし、ここは……。


「えっと……君、一人で来たの?」


「……(コクリ)」


「じゃあ、このままじゃ家にも帰れそうもないし、家までおぶってあげるよ」


「!?」


あの二人なら何とかなりそうな気もしたし、このまま女の子をほっとくわけにもいかない。

だから、まずはこの女の子を送ってあげようと思ったんだけど……。


「……(じぃーっ)」


疑うようにじと目で睨んでくる女の子。


どうやら、僕が怪しい奴かどうか判断しかねてるらしい。

まぁ、当然だよね。僕でもこんな奴がいたら疑うし。


「それとも、それが嫌なら、君の親に連絡してここに来るように言っておく?あ、とりあえず立ってよ。ここじゃ人が多くて大変だからさ」


呆然とする女の子の手をとり、立たせて上げる。

その時、女の子の足からするりと草履が地面に転がり落ちてしまう。

僕はそれを拾って、女の子の足元に寄せた。


女の子はその草履に足を乗せると、僕と正面から向き合う。


「場所を移動するけど、おぶっても構わない?」


「……(コクリ)」


僕が出来るだけ笑顔でそう言うと、俯きながらも頷いてくれた。

おんぶされるのがそんなに恥ずかしいのかな?

わかる気もするけど。


「落とすといけないからしっかりつかまっててね」


そう言いながら僕は女の子をおぶると、周りからの視線を感じたので素早く移動をした。


確か、出店の中央のエリア辺りに休憩所があったはずだからそこに行こうっと。





「では、あちらでの騒ぎは特にはないのですね?」


「うんー、というか事件を事故として偽ってるからねー。事件と事故じゃ皆の反応の仕方も変わるもんなんだよー」


「それでも大問題な事には変わりないでしょうに……。それで、その事件についてなんですが」


「何ー? 何か手がかりは見つかったのー?」


「ええ、それらしき情報は」


「何なにー? 教えてよイッチー」


「胸を触らせてくれるのならいいですよ?」


「えー、乙女に対してその要求はタブーだよー。セクハラだよー」


「何を言ってるんですか……。真のセクハラは触ってから始まるものなんですよ?」


「が、ガチでこの人変態だー……」


「グフフ……そう褒めないでください」


「いやー、褒めてはないからー」


「まぁ、その情報についてはまた機会を改めてくれませんか? 実はこの情報が本当に正しいのかまだ分かってないんですよ」


「……それは本当なんだよねー?」


「おやおや、そんなに怖い顔をしてどうしたんです?」


「分かってるのー? 無駄に隠し事をしていると目をつけられるってー」


「つまり?」


「イッチー、幼馴染として忠告するけど、あまり情はかけない方がいいよー?」


「……御忠告感謝しますよ。ただ、自分は情はかけるつもりはありません。そこだけは心配しなくてもいいですよ」


「分かればいいんだけどねー」


「では、自分はこれで失礼しますよ」


「うんー、またねー」













「……嘘つき、情をかけてないんだったらわざわざ報告なんてしてこないくせに」

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