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割りに合わない家族  作者: 白菜
二章
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第十一話

感想で幾つか指摘された点があったので、そこを直しながら頑張りました。

……こんな感じで良かったのかな……?

とにかく、これからもよろしくお願いします。

「くそっ……」


部長から事件解決の頼みを引き受けてから次の日。


アパートで僕は携帯の画面を喰いいるように睨みつけていた。


あれから手がかりがないかとネットから色々調べてみたけど、どこを探しても『原因不明』だとか、『超常現象』とかそんな単語が出るだけで、詳しい情報は見つからなかった。


『迷宮入り確定事件!?』なんて記事の見出しに書かれたものを見た時は心が折れかけたぞ、全く。


それでも僕は頑張って今もネットに目を通しているけど、流石に部長が解けないでいる事件。

そう簡単にはいかないようだった。



……にしても、昨日からずっと携帯をいじくってたから疲れたな。


少し休もうかな、と思い僕は携帯の電源を切って、大きく背伸びをする。


「あ、やっと終わったの?」


そんな僕の様子を見て、声をかけてくる由々。

僕が何か熱心にやってるのを見て、邪魔をしない方がいいと気を使ってくれたのか、今の間まで妨害(何処かに行こうとせがんだりする事)をしてこなかった。


「いや、終わってはないけどね。ちょっと休憩」


ちなみにだけど、二人には僕が事件の事を調べてる事は言ってない。

話したら、協力するとか言って邪魔にしかならない事をするのが目に見えてるから。

なので、二人には新しいバイトでネット関係の仕事をやってると話して、昨日のはそのバイトの面接だったと嘘をついておいた。


……嘘をつく時、罪悪感を欠片も感じずに笑顔すら浮かべられたのはなんでだろうか。


「あんまり頑張り過ぎると体に良くないよ? たまには休みを入れないと、私もヒマになっちゃうし」


「前者はともかく、後者の理由は明らかに由々が遊びたいだけだよね?」


「学生の本分は遊ぶ事だからね!」


「……そもそも由々は学校を辞めたんだから学生じゃないでしょ」


グッ、と指を突き出す由々に冷やかにツッコむ僕。


由々にとってはどちらにしても変わらない事なんだろうけど。

にしたって、学校を辞めた奴とは思えない相変わらずのテンションだ。


「にゃははははっ! 私は基本的には自由人だからね! 人生の中で出来る限り自由を謳歌する事を心に決めてるんだよ!」


「自分で自由人って言わないでよ……そんのだと、大人になってから苦労するけど、いいの?」


「だからこそだよ! 大人になって苦労する前に私はめいいっぱい遊ぶんだ!」


「典型的なダメ人間だ……」


もはや呆れる事しか出来ない由々に僕はため息をついた。


「そういうわけで蒼波君! 休憩するんだったら遊びに行こうよ!」


身を乗り出して、迫ってくる由々。


暑苦しい、と感じる前に僕が思ったのはどうやって断ろうか、という回避だった。


この状態で由々に付き合ったら、身が持たない。

孝一から呼び出された事にしよう、と僕が考えて時、由々が思い出したように付け足した。


「あ、ちなみに蒼波君がこの誘いを断った場合、ご近所さんに蒼波君のトップシークレットの一つを暴露させてもらうであります」


「あはははっ、逃げ場が無い!」


由々の手にはいつぞやの聖書。

僕に見せびらかすように悪い笑みを浮かべながら、ふりふりと聖書を振っている。


僕に……! 僕に自由は無いのかッ……!


「蒼波君、はい、これ」


床に打ちひしがれる僕に由々が一枚のチラシを渡してきた。


何だこれ?


僕は受け取ったチラシを目に通す。


えっーと、何々……。


「『第26回町内花火大会』……?」


チラシには去年のか、花火を打ち上げている綺麗な写真と共にそんな文字がでかでかと書いてあった。


確か、去年はバイトでいけなかったんだっけ。


「今年は派手にやるみたいだからね! 出店もあるだろうし、楽しみにしてるんだよ!」


ブンブンと手を振り、行きたいアピールをする由々。


子供か……。


「まぁ、リリサも多分、こういうのは初めてだろうし、行ってもいいんだけど……迷子とかになりそうで不安があるしなぁ」


「え? (チラリ、と見せつけられる聖書)」


「よし、リリサを呼んで早速準備をしよう」


はい。脅しに屈しましたが、何か?


「そうと決まったら、浴衣を用意しないとね。蒼波君、浴衣ある?」


「今まで一人暮らしだったんだから、あるわけないでしょ」


「でも、蒼波君ならコスプレ用に――」


「ちょっと待って由々。僕がいつ何時にそんな事を一度でもした事があったかな?」


由々に何気無く言われた言葉によって、僕のメンタルに大ダメージ。


僕がコスプレ用の服を普通に持ってると由々に本気で思われてたらしい。

僕って皆にどんな人間に思われてるんだろう……?


「私も浴衣は流石にないしね……。どこかで借りようかな?」


涙する僕をほっとき、既にお祭り気分の由々は他の部屋でゲームをしてるリリサを連れてくると、浴衣を借りれる場所がないかと、携帯を動かしながら、二人でどんな浴衣がいいか話し合っている。


「ねぇ、リリサちゃんはどんな浴衣を着たい?」


「……わたしは、ピンクがいい」


「ピンクかー、なら私は緑にしようかな?」


「……蒼波は、緑よりもピンクの服の方が好き」


「えっ? そうなの?」


「……うん。後、蒼波は、胸が小さくて、背が低い人が好みで、髪型はツインテールが――」


「ストォォォォップ!!」


ぺらぺらと僕の好みを詳しく説明するリリサを僕は全力で止めた。


「ちょっ! 何で!? どうしてリリサが僕の好みを詳しく知ってるの!? おかしいよね!?」


後、僕はロリコンじゃないから!そこだけは分かってね!


必至に肩を掴みながら叫ぶ僕にリリサは淡々と言った。


「……蒼波の机にあった本にそういう人達の写真があったから……違うの?」


「違う! いや、違わないけど、違うんだ!」


「……? どっちなの?」


「僕がツインテール以外にもポニーテールもいけるって事以外は大体合ってる――って、僕は何を言ってるんだぁーーッ!?」


混乱して、妙な事を口走ってしまう僕。


どうして自分で好みを暴露しちゃってるんだよ!?

馬鹿過ぎるだろ、僕!


「へぇー、蒼波君はそういうのが好みだったんだー」


そして、またもや悪い笑みを浮かべながら、携帯を操作している由々。


「ち、違うって……これは――って、何をやってるの由々?」


「ん? 大した事じゃないよ? ちょっと今の蒼波君の発言をツイッターで……」


「土下座でも何でもするので、それだけは止めて下さい!」


そんな事をされたら、社会的な死は間逃れない。

躊躇いもなく、土下座をする僕。


「じゃあ、今夜の出店は全部奢ってね♪」


「そんな!?」


頭を床につけて、懇願する僕に由々の悪魔ような提案。


今月は本気でヤバいのに! これ以上お金がなくなったら……!


「……チョコバナナ、焼きそば、焼きとうもろこし、たこ焼き……」


リリサの方を見ると、食べ物の事で頭がいっぱいのようで、僕への配慮とかそういったものは一つも感じられない。


……これ、本気で詰んだかも。


「浴衣を借りれる場所も見つかったし、行こう、蒼波君!」


「待ってよ! 行く前に孝一とかも呼ぶから……」


最後の抵抗にせめて、一緒に地獄へ落ちてくれる友人を呼ぼうとする僕にトドメが由々から放たれた。


「棡原君は今日は彼女と行くみたいだよ?」


「あの野郎ォォォッ! 何一人だけいい思いを……待って! お願いだから待って!」


「リリサちゃん、片足を持ってくれる? 蒼波君を引っ張るから」


「……(コクン)」


「リリサ、頷かないで! 足を引っ張っても駄目だから! 畜生! この場には僕の味方はいないのか!? あ、あっ、誰か! 助け――嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





僕の苦痛の叫びと共に……こうして『第26回町内花火大会』は始まったのだった。

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