相談屋の日常‐お手伝い希望の少女りんの話 その参‐
日光が窓から差し込み、部屋に光が注ぎ込まれたので私は目が覚めた。目覚ましはまだ鳴っていない。珍しいこともあるものだ。普段は目覚ましを鳴らしていても目が覚めず、母に起こしてもらうことなどざらにあるのに。カーテンを閉め忘れたため、日光が部屋に注いだということも要因に挙げられる。けれど、それだけではないと思う。さっきから何とも形容しがたい気持ち悪さを感じている。それは単なる思い違いではない確証が何故かあり、いやな予感がしてならない。冷や汗が流れる。どうして今日なのだろうか。他の日だったら良いのに。
だって、今日は弟の遠足があるのだから。
先程から体の奥から溢れてくる不安をごまかし、着替えを済ませ、リビングへと足を運んだ。いつもより早いせいか、リビングにはママしかいなかった。私の家はリビングとキッチンが一緒になっている。対面式ではない。
「おはよう。」
私がソファーに座りながらそう言うと背を向け調理していたママは振り返り、おはようと返した。いつもはそれで終わりで料理の方へと戻るのだが、今日はまだこちらを向いていたので頭を傾げた。
「ママ、どうしたの。」
「どうしたのはこっちの台詞よ。りん、どうしたの。いつもお寝坊さんなのにこんな早くに。それにあなた顔真っ青じゃない。」
「え。」
朝起きてから気分は悪かったのは自覚済みだが、まさか顔にまで現れているとは思わなかった。
「何かあったの?」
ママは作業場から離れ、私のほうまで来て尋ねた。ママの表情は眉を下げ、向けられたその瞳からは心配でならないというママの気持ちがひしひしと伝わってきた。
私はママに朝起きてから抱いている思いを伝えた。自分でもよく分からないのから上手く伝えられたかは分からない。
ママは一通り聞くと私の頭に手を置き、そして優しく撫ぜた。
「大丈夫、心配しなくて大丈夫よ。りんは受験生だからそれもあって、何ともいえないどうしようもない不安が沸いてしまうのよ。きっと。ママもりんと同じ中三だったのときあったわ。だから、大丈夫。」
「…うん。」
ママに励まされたことで、まだそれはあるけれど気分はさっきより軽くなった。そして、いつも通りママとパパと弟と私の四人で仲良く朝食をとった。
「遠足楽しんで来てね。」
そういうと弟は満面の笑みで、うんと言った。
「いってきます。」
そして、いつも通り一番最初に家を出た。ママとパパと弟の優しい笑みに見送られながらいつも通り。
その日の夕方、私は痛感することとなる。朝起きて感じたものが決して杞憂ではなったと。