表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

星野 輝琉ルート#1

 予想通りとは思いますが、これは別ヒロインのルートになります。

 ヒロインの名前は…… それは後ほど。

 俺は扉を開けたものの、一応、礼はしておくべきだろうと思い、振り返った。

 その時、

「あら、お客さん?」

 奥の方から声が聞こえてきた。

 それを追うように、少女がふわりとした優雅な足取りで姿を現す。


 ――瞬間、薄暗い店内に、その少女の立つ場所だけが柔らかな光に包まれたような錯覚に陥った。

 どこまでも透き通る白い肌。

 風が吹けば飛んでいってしまうのではと思うくらいの、華奢な体つき。

 そして何よりも、その小さな顔の内にある瞳はどこまでも澄み渡っていて、見つめていたら吸い込まれていってしまいそうだ。

「いらっしゃい」

 少女がにこりと微笑む。

「あ、ああ……」

 少女が全く邪気のない微笑をするもんだから、見つめていた自分に非があるような気がしてきて(いや、実際他人を凝視するのはあまりよくないことだが)、何だか急にばつが悪くなってしまった。

 俺は思わず、視線を下に逸らす。

 彼女の細い脚を、これまた細い黒のジーンズが覆っている。

 上着は、その手の男なら感涙物の大きめのワイシャツ。――の、上に深緑色のエプロンを身に付け、頭に赤いバンダナ、軍手をはめた手には何故か金鑢かなやすりを持っていた。

 しかもよく見れば、全身埃ほこりまみれているのか、粉っぽくなっている。

 ああ、“柔らかな光”と思ったのは、舞い上がった埃に日の光が当たって、それで白く見えていたんだな……


 少女は二、三歩、俺の方に歩み寄ると、頭に巻いていたバンダナを取る。

 はらりと解ける艶やかで長い黒髪は、彼女の肢体シルエットをよりはっきりとさせるようで、とてもよく似合っている。

 その黒髪を自慢するように、少女は軽く頭を振った。

 同時に舞う、大量のほこ――げほっ――り……埃。

「あ、ごめ――けほ、けほっ…… あはは、ごめんごめん」

 今度は微笑ではなく、可笑しそうに笑う少女。

 これはもう、営業向きの笑い方じゃないな。初対面、しかも客と店員という関係だというのに、随分フランクな対応だ。

 埃を撒き散らしておいてそれかよ……ってな気分にもなる。


 俺はいかにも迷惑そうな顔をして片手で口を押さえつつ、もう一方で顔の前をパタパタと扇ぐ。

 こんなことで埃がいなくなってくれるはずはないのだが、ま、精神衛生上の問題だろう。

 そういえばどうして、無駄だとわかっているのにやってしまうんだろうな、コレ。

 パタパタを続けつつ、一応は文句を言っておく。

「一応、客なんだけどな、俺……」

「だからごめんってば…… 奥で作業してたもんだから…… 本当にごめんなさい」

「ま、いいけどな」

 他人から受ける無礼も、相手によって随分と心境が変わってくるもんだ。

 あのジジイだったら今頃、問答無用で張り倒してるな、きっと。

 当のジジイは「商品を汚すなといつも……」と、愚痴々々ぐちぐちと呟いている。

 それに少女は「ごめんごめん、おじいちゃん」と、反省の色薄く応えている。ジジイはわめくと埃を吸って咳き込んでしまうので、大きな声を出せないのだろう。いかにも“仕方ない”といった顔で、口を塞いでいる。

 まぁ、それはありがたいんだが…… つかジジイ、商品よりも客を心配すべきだろ、客を。

「そんなことより、入って入って」

 少女は遊びに来た友達を出迎えるように、軽く促す。

 このノリはもう、俺が“客”だという認識がないんじゃないだろうか。あるいはジジイ共々、客商売のイロハを全く知らないかのどちらかだろう。


 っていうか、俺、帰るところだったんですけど……?




【星野 輝琉ルート#2へ】

 いかがでしたでしょうか?

 すいません、まだヒロインの名前が明かされていませんね。

 次回には必ず……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ