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第二幕

「お兄さんは、止めないんだね……」

 少女が、少し困惑したような表情を見せ、そう呟いた。

 本当は止めて欲しかったのだろうか。しかし、俺は興味のないことには行動しない主義だ。

 知り合いならいざ知らず、いきなり降って来た見ず知らずの少女の身を案じることなど有り得ない。その場限りの事態に労力を裂く気など、さらさらないのだ。

「別に。好きにしたら良いだろ。俺には関係ない」

「ふーん……」

 そう言うと少女は、ひょこっと腰を曲げて、俺の顔を見上げるようにのぞき込んできた。

「普通は止めると思うんだけどなぁ」

 関心を持たれてしまったのだろうか。興味津々といった瞳で俺を見ている。

 その上目遣いの表情に、少しだけドキリとする。

「悪かったな、普通じゃなくて」

 恥ずかしさを隠すように、俺は毒と同時に思いっきり少女の顔に煙を吐いてやった。

 少女が、わぷっ、と言って顔をそむける。もちろん、これが俺の狙いだ。

「もう、煙を吐き掛けるなんて無礼だよ!」

「上からし掛かってくるのは無礼じゃないのか?」

「んむぅ……」

 すると少女は頬を膨らませ、抗議の姿勢を取るが、しかしすぐに微笑ほほえむ。

「そうだね。それじゃあおびに、ウチにご招待してあげる」

「招待されると、どんな特典が付いてくるんだ?」

「夕飯、ってのでどう?」

 悪くない。来たばかりの町で、どうせ行く当てもなかったし、何より食事にありつけるのはありがたい話だ。

 俺は招待を受けることにした。

「乗った!」

「受けた!」

 少女は楽しそうに親指をぐっと立てると、自慢気じまんげにふんぞり返る。

 逸らしすぎで体勢を崩し、転びそうにならなければもう少しまっただろう。

 慌てて腕を振り、体勢を立て直すと、少女は少しだけほおを赤らめて言った。


「わたし、風原かざはら 蒼香あか

「……俺は、天城あまぎ そらだ」

「空…… お兄ちゃん……」

「?」

 急に驚きに目を見開いた少女――蒼香は小さな声で呟いて、しかしすぐにまた、嬉しそうな笑顔に戻る。本当に自殺を望んでいるとは思えないような笑顔。

 その笑顔を見て、俺は不覚にも再び、胸の動悸どうきを感じてしまった。

 慌てて煙草の煙を、深呼吸のように思いっきり吐き出す。

煙と共に、胸の動悸も消え去った。


「それじゃあ、家に案内するよ〜」

 そう言うと蒼香は、くるりと振り返り、二、三歩前へと踏み出す。

 俺はそれにならってを進めようとして、ふと思い出した。

「あ、バイクがあるんだ」

「なーんだ。じゃあそれに乗って行こうよ」

「ガソリン、切れてるけどな……」

「……」


 結局、ただの荷物と化した二輪車を引き摺って、町を歩くハメになったことは、言うまでもない。


 いかがでしたでしょうか?

 まだまだ序盤ですが、これからもよろしくお願いします。


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