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1話 魔王、ダンジョン配信を知る。


 『速報です!魔王城壊滅、勇者一行の勝利です!』

 「は?」


 福岡県の博多にある屋台でラーメンを食べていると、とんでもない情報が屋台で流れているテレビから入ってきた。


 『魔王城が愛知県に突如として出現してから、早12年、我々人類の願いがついに叶いました、尚、魔王は依然として逃走中とのことです』

 「おお、魔王城壊滅したんか」

 「良かった、良かった、これで日本も平和になるなぁ」


 屋台にいる他の客どもは、そう言って安堵の表情を浮かべていた。

 よかねぇよ!俺の家だぞ。

 主人の留守中を狙うなんて、なんて勇者だ。

 ゴミ野郎め。


 『ズルルル』


 そうして俺は、せっかくゆっくりと食べようと思っていた博多ラーメンを一気に啜った。


 「大将、お勘定!」

 「へいよー」


 この"現代"にやってきて12年、近代兵器とやらに悩まされながらも何とか凌いでここまで来たってのに、魔王の留守中に壊される魔王城ってなんだよそれ。

 勇者の野郎、そこまで腐ったか。

 とりあえず城の近くまで行ってみよう、今の俺は人型モードだし近づいてもバレないだろ。


 『ドンッ』

 「大将、釣りはいらねぇから」

 「へ、へい」


 俺はそう言って、格好をつけるためだけに1万円を机の上に置いて屋台を後にした。


 「しかし、もし本当に魔王城が破壊されていたとしたら、もしかして俺、ホームレスなのか?」


ーー愛知県、豊橋市にて


 「嘘じゃん、マジじゃん、俺の家ないじゃん」

 「はいはーい、下がってねお兄ちゃん危ないよー」

 「す、すみません」


 そう言って警備のおっちゃんは、"KEEP OUT"と書いてある警戒テープの外へと俺を優しく追い出した。

 愛知県豊橋市に12年前建てた俺の魔王城が、まさかこんなになるとは……。


 『ガラッ』


 見事に全壊である。

 く、クソォ勇者の野郎。

 俺を追ってこの世界にやってくるほどの執念深さもさることながら、12年敗れ続けても向かってくるそのメンタル。

 敵ながら天晴れ……いやいやキモすぎるって、マジで!

 しかも俺の不在を狙うとか、どんだけ勝ちたかったんだよ。


 「これからどうっすかなぁ、一応、俺の人型モードの偽名で口座はあるから金銭面は大丈夫だけど、肝心の家がねぇ」


 適当なボロ家を探すか?

 いやいやどれも危険だ、この人型モードもずっとは維持してられない。

 魔王モードに切り替われば、俺の痕跡を辿って勇者が来てしまう。

 せめて人気の少ないところなら……。


 「なぁ、昨日のマルちゃんのダンジョン配信見た?」

 「見た見た!相変わらず面白かったよなぁ」

 「……ダンジョン配信」


 家がない事を憂いていると、前を歩く小学生達がそんな話をしているのが耳に入った。

 ダンジョン配信か、近々よく耳にするな。

 なんでもダンジョンを攻略する様子をヨイッチやツイチューブに上げるとか。

 そんなんが流行るとは、この現代も終わりよな。


 「ダンジョン配信者のマルちゃんだけど、年収億越えらしいよ」

 「あー、俺もそれ知ってるー」

 「……億越え、だと」


 そ、そんなに稼げるのかダンジョン配信とやらは。

 一応、人型モードである相楽恭平名義の口座には120万円ほど入ってはいるが、今後の生活の事を考えると正直心もとない数字ではある。

 億越え収入があればそれこそ、魔王城の再建だって夢ではない。


 「どれどれ、ダンジョン配信者っと」

 『ポチポチ』


 俺は持っていたスマホでダンジョン配信について調べてみた。

 

 「えーっと、なになに、"ダンジョン配信者"は現在最も熱いコンテンツの一つであり、売れれば収入は数億に達する事もある、ただライバルが多いので工夫が必要……」


 工夫か……。

 正直言って、魔界出身の俺からしたらこの現代のダンジョンなんて取るに足らない難易度ではある。

 それこそ現代ダンジョンの最難関であったとしても、俺はほぼ無傷で攻略できるだろう。

 あ、待て待てこれいいな。

 最難関ダンジョンをバンバン攻略していけば、名が売れて年収もすぐ億にいくかも。

 うし、これでいこう。


 「さてさてそうと決まれば機材だが……え、パソコンってこんな高いの!?」


 パソコンの通販サイトを開き、動画編集用パソコンの欄を開くと20~35万ほどの価格帯がずらっと並んでいた。


 「こ、こんなの買ったらすぐに120万なんて無くなるぞ……」


 仮に120万円で最新の機材を揃えたとしても、肝心の住む場所が無ければ動画編集はおろか、衣食住すらもままならない。

 どこかに家賃0円で尚且つ勇者にバレにくいところはないかなぁ……いや待てよ、ダンジョンの中には外の世界に魔力が漏れ出ていかぬよう、保護魔法が施されていると聞いたことがある。

 ならば……。


 「てかダンジョンにそのまま住んじゃえばよくね?」

 

 俺は小さくそう呟いた。

 ダンジョンに住めば攻略する様子を配信に映して、そのままそこで編集しちゃえば移動する手間も交通費もでない。

 これは、なんたる名案!よしダンジョンに住んでしまう。

 しかし愛知県内のダンジョンは、勇者が来るかもだし危険だよな、うんそうだ東京へ行こう!

 あそこなら配信機材も集まるだろうし、何より東京の八王子の方にはまだまだ未攻略ダンジョンが多いとも聞いた事がある。


 「よし、行くか東京」


 そうして俺は12年間お世話になった、第二の故郷とも言える愛知県豊橋市に別れを告げ、東京へと向かうのだった。




 

 


 


  


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