第3話 冒険の世界へ
「小骨ちゃん…?」
今日の昼まで普通に生きていた小骨ちゃんが今は地面に倒れている。
周りには村の人たちの気配は感じられない。
「まだ村人がいたか… リーダー、どうしますか?殺しますか?」
狼の仮面をつけた男の隣にいる女が言う。
しかし、狼の仮面をつけた男はそっけなく「ほっとけ…」というと、
その場を去ろうとした。
少女はこの時、今まで感じたことがない感情を知った。
激怒と憎悪が入り混じった感情を。
少女は怒っていた。これまでに感じたことのないほど強く。
人の大切なものをたくさん奪っておきながら、
自分自身はすぐ逃げていくその姿がどうしても許せなかった。
その時だった。少女の白い角は赤く染まっていき、模様が浮かび上がってきた。
それと同時に少女の体にも変化が起きる。
少女の体が獣の姿になっていくのである。
全身が白い毛に覆われ、尻尾は先に赤い毛が生えている。
少女の時の何倍もの大きさになり爪や牙も生えている。
「リーダー!少女が!」
もちろん黒服の集団も異変に気付き、武器を構える。
しかし、少女は近くにいた3人の黒服を吹き飛ばすと、一目散に狼仮面の男に襲いかかる。
男に少女の大きな牙が刺さると思った時、男は手に持っている槍を牙に食い込ませ、押さえ込んでいた。
少女は完全に人外化し、力も比べ物にならないほど強くなっているはずなのに、
負けることなく、さらには押し返している。
狼仮面の男が止めている間に女が矢を放つ。
矢は少女の顔に突き刺さり一瞬怯ませると、男は少女をのけぞらせ女が矢を続け様に連射する。
矢は腕や足、顔や胸まで突き刺さり、少女は大きく吹き飛ばされ、後ろにあった壁に叩きつけられた。
叩きつけられると同時に獣の姿から人間の姿に戻ったが、獣の姿の時に刺さっていた矢は
元に戻るのと同時に地面に落ち、幸い少女に怪我はなかった。
急いでまた攻撃しようとするが…
「…ッ」
体を動かそうとすると激しい激痛が襲った。
対して相手の男は襲われたはずなのに疲れた様子は少しも見せずにトドメを刺そうと近づいてくる。
(小骨ちゃん…ごめん… 仇、とれなかった…)
男が槍を振り上げ、少女が覚悟を決めた時、少し動きが止まった。
小骨ちゃんはその隙を見逃さなかった。
「ツノちゃん!」
さっきまで地面に倒れていた蛇の少女がツノちゃんの手を強く握り走っている。
黒服の女は急いで振り返るが先程まで倒れていた少女がいなくなっている。
「え!?な、なんで小骨ちゃんが!?」
「ツノちゃんが頑張って戦ってくれてるのに私だけ待ってるだけなんてできないよ!
急いで逃げよう!」
「う、うん!」
「クッ… 逃がすか!」
すかさず黒服の女が弓を構えるが、狼仮面の男が直前で制止した。
「…リーダー、なぜですか…」
「もういい… 村人を逃したのはトドメを刺すのに躊躇した私の責任だ…
それにあいつらが逃げたのは北方面だ。私たちに殺されるか自然に死ぬかのどちらかになるだろう。
分かったのなら撤退準備をしろ。全員、撤退準備!すぐに撤退するぞ!」
狼仮面の男の一声で周りの全員がすぐに準備を始める。
女は答えには納得していなさそうだったが、渋々準備を始めた。
そのうち全員が撤退準備を完了させると男は北の地平線を見ながら小さくつぶやいた。
「逃げ切れよ…」




