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退屈な世界

退屈。

退屈。

退屈。


何もかもが退屈。


私に寄ってくるのはゴマすりをしようとする腹の出た汚い生物達。


あれって私と同じ生物なのよね?。


結婚がどうだの、うちの息子はどうだの、ハエみたいなことしか言えないのかしら?。


いっそ死んでくれればいいのに。


気持ち悪くて、夢に出てきそうよ。


「…。」


あぁ、あの生物達も気持ち悪い。


私の前にいる時はいい子ちゃんのふりをして、しっぽを振っているのに、影では私のことを叩く、ご立派なドレスと、ご立派な体型、ご立派なお顔の令嬢達。


「…。」


どちらかと言うと、後者の方が気持ち悪いわね。


出てってもらいたいわ。


そうね、そろそろあの令嬢達に、自分たちの人生から出てってもらいましょうか。


私は()()に座り、パンッ!と手を叩く。


皆が緊張し、汗をダラダラ流しながらこちらを見る。

今回は誰が()()のか。

それを見届けるために。


でも


それは


「そこの、ご令嬢達?今、何を話していたのか、大声で言ってちょうだい。」


「え、私たちですか?女王陛下?。」


「そうよ、さ、早く話してちょうだい?

とっても素敵なお話だったじゃない、皆様にもお聞かせ願いたいわ。」


社会的に死んでもらう。


「そ、そんな、大した話題では、」


「…。女王の命令に背くのね、いいわ、私が全て言ってあげる。」


「そ、そんな…。」


「それが嫌なら、早く話しなさい!女王の命令よ!」


「じょ、女王陛下の事を、し、尻軽女、と、」


「それと?」


「か、顔だけの女、と、」


「あとは?」


「他には、ありま、せん。」


令嬢達は涙を流し、足を震わせながら言う。


「嘘ね、まだあったはずよ、代わりに私が言ってあげる。」


「運が良いだけの女王と、馬鹿な女と、権力が取り柄の女。そんなところだったわね。」


「皆様、これを聞いてどう思いました?」


「酷い、です、。」


1人の紳士が声をあげる。


「そうですわよね?」


私は令嬢達に皮肉たっぷりの笑顔を向け、


「そこのご令嬢達の中から、おひとり、こちらへ来てもらおうかしら。30秒時間をあげますから、選んでもらいましょう。その選ばれた方には、とても素敵な贈り物を差し上げますわ。『死』という贈り物を。」


令嬢達の顔がサァッーと青くなっていき、ついには責任の擦り付け合いを始める。


「あ、あんたが言ったでしょ?尻軽女って!」

「そっちだって、一緒に笑ってたでしょ、私は嫌よ!あなたの方が下の立場なのだから、あなたが行きなさいよ!」

「はぁっ!?何で私が、、、そ、そもそも、あんたが話し始めたから…!。」


あぁ、醜い。誰も、悪いと思ってないのね、こんなの、


「…時間の無駄。決めましたわ、全員、私の前にいらっしゃってもらいます。」


令嬢達はビクッとし、唾を飲み、勇気を出し、こちらへ来る。


醜い争いをして、自分から来なかったくせに


こういうことには『勇気』を出せるのね…。


「さぁ、皆様?死ぬ覚悟はよろしくて?」


令嬢達はぎゅっと目を瞑る。


そして、令嬢達のお顔に、何かが飛んでくる。


ドゴォーン!!という音が5発、いや、5人分鳴る。


え、何の音かって?


それは


私の拳が令嬢達のご立派なお顔をぶん殴り、令嬢達のお体が吹っ飛ばされ、壁に打ちつけられる音ですわ。


「はい、これで死刑執行いたしましたわ。

皆様、今日はここまで、お帰りはあちらですわ。

お帰りの際はどうかお気をつけて。」


『かしこまりました、失礼致します、女王陛下。』


あらあら、皆様怖いものでも見たかのように、素早いお帰りですわね。


さぁ、もうひと仕事。


壁に横たわっている令嬢達とそのご両親をまた私の前に立たせ、


「あなた方に、選択肢をあげましょう。1つは、爵位をこの場で剥奪するか、もう1つは…。」


令嬢達もご両親達も、何を言われるのか、わかったものではないだろう。


「病院と、孤児院の、ボランティアを死ぬまでやってもらうか、あぁ、もちろん、後者を選択するのなら、爵位はそのままにしてあげますわ。そして、前者を選ぶのなら、このまま監獄行きですわ、さぁ、今、ここで選びなさい?時間は…そうですわね、30秒で充分でしょう。」


選ぶ答えは1つのはずだ。


「3.2.1。さ、お答えなさって?」


令嬢達もそのご両親達も、とても悔しそうな顔をしながら、


「ボランティア、を選びます。」


ほら、予想通り。


「良いのですわね?爵位は残しますが、実質は私の奴隷、自由は少なくなりますわよ?」


「それで、かまいません。」


歯を食いしばってその父は言う。


「そう、なら、いいですわ。

ただ、1つ条件がありますの。」


「ボランティアをなさいと、私が言ったことは、誰にも言うことを許しません、もしも、破った場合は、即刻死刑に致します。

そのことを、ゆめゆめお忘れないように。

さぁ、お帰りはあちらですわ。お気をつけて。」


そうして、全員帰って行った。


誰もいなくなったパーティー会場を出て、私は月夜が照らす、中庭の椅子に座り、自分の名前の由来になった、『ベラドンナ』を眺めながら、これまでの事を思い出す。


この退屈な世界に生まれた私の名前は、ベラドンナ・ハーザード。

『ベラドンナ』は美しい猛毒の植物だ。

『ハーザード』は私が治めるこの世界で1番大きい帝国の名。

両親は、12年前に、馬車の事故で他界した。

賢い皇帝に、美しい皇妃、優しい兄。

退屈だと思ったことはなかった。


両親が死ぬまでは。


先程、馬車の事故で他界した、と話したけれど、それにはさらに、他国のスパイである、使用人達が計画したというオプションまでついた話だ。


もっと言えば、私は使用人達から幼い頃は、よくいじめを受けていた。

家族には言えなかったけれど…。


両親が死んでから、私に残ったのは、虚無感だけだった。

何もない、白黒で退屈な世界。


唯一の救いは、この退屈な世界に、『病院』と『孤児院』というものがあったこと。


いじめていた使用人達は皆、私が社会的に殺した。


それから舐められないように、悪女になった。


悪意を持ったもの達には、『社会的に死んでもらう』と称して『ボランティア』を命じている。


それが、残された私にできる事だった。


病院には、何かとお世話になったし、孤児院は、何故か、理由は分からないけれど、家族みたいに思える。


だから、私は思ったの。


この退屈な世界を変えられたら、どんなに良いかって。


帝国民を守り、支えるのが、私の使命だから。


まぁ、ずっとそんなことをやっていて、周り、特に私が通っている学園の女子部の生徒からはこう呼ばれているが。『毒の女王』と。


つまりは悪女なのよ、私は。


けど、それで構わないわ、そう思われても仕方ない事をしているから。


私は誰にも好かれようとはしていない。


その必要じたいないから。


殴って、殴って、相手を社会的に殺す。


それでいい。


邪魔な人間も徹底的に排除する。


それが私のやり方よ。



「ベラドンナ!」

どのぐらい、そうしていたんだろう、分からないけれど、呼ばれた方に振り向くと、私の兄、ルシアンがいた。


「お兄様?どうしてこちらへ?」


「あー、いや、辛そうな顔をしていたから…。」

お兄様は少し頬を赤らめて言う。


「少し、昔のことを思い出していまして。」


「そうか…。大丈夫か?」


「えぇ、心配をかけてごめんなさい、戻りましょう。」


お兄様はフッと笑い、「あぁ、戻ろう。」


ー翌日ー


「ベラドンナ…。あんたさえ、いなければ…っ!!」

頑張れ!悪女!

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