予想外
いやー。
ちょっと、ちょっとだけ長居しすぎましたね。
特に、長が親切すぎて毎日宴を開いてくれるし、俺も毎日狩りに出るたびに腕が上達していくもんだから、気付けばこの集落で俺を知らない蛇はいなくなっていた。 完全に「英雄」扱いである。
そして、ちやほやされる居心地の良さに甘えていたら……。
感覚的に、三ヶ月はいましたね。はい。
本当に、すいません。 当初は、一週間でドロンするつもりだったのですが。
「どうしました、悩み事ですか? 今日もあなたが十八匹もブラックバッファローを狩ってきてくれたせいで、これで一週間連続で宴ですよ」
長が話しかけてきた。 「せいで」と言葉では困ったふりをしているが、その顔は隠しきれない満面の笑みだ。涎が垂れそうになっている。
……そりゃあ、そうだろう。
この「バインドスネーク」という種族は、雄雌に関わらずとてつもない大食漢だ。成体ならば、ブラックバッファローを一匹につき丸々一体は平らげる。
この集落の住人は約五十匹。 対して、狩りができる戦士階級が獲ってくる獲物は、一日平均で三十匹ほど。 残りの二十匹分は、木の実や小動物で腹を満たすしかない「微細な飢餓状態」が常だったのだ。
そこに、俺という「毎日十八匹の肉を余分に持ってくるバケモノ」が現れたのだ。 食糧事情が一気に改善され、毎日がパーティになるのも無理はない。
ちなみに、今の集落には百匹ほどの蛇がいるが、その半数は市場を利用するために一時的に訪れている余所者だ。
「あ、そうだ。これ、ブラックタイガーのつけ牙です。日頃の感謝を込めて、みんなで作りました。」
なんでも、つけると、牙の鋭さが増すらしい。
ありがたく、つけさせてもらおう。
集落の様子を見渡す。 日本のような建築物はなく、泥を積み上げてなんとなく「ここが俺の家」と線を引いているだけの原始的な居住区。
だが、活気が違う。
話を戻そう。 俺がアホみたいにブラックバッファローを狩ってくるおかげで、この集落の噂を聞きつけ、移住を決めるバインドスネークが急増しているのだ。 それどころか、さらに強力な毒を持つ「ポイズンスネーク」などの他種族までもが、食料を目当てに住み始めている始末だ。
食料供給の要。 集落発展の立役者。
つまり、何が言いたいかというと。
俺は、この集落にとって「代わりの利かない絶対的な存在」になってしまったのだ。
……どうしよう。 これ、抜け出そうとしたら、全力で(物理的に)引き止められるやつだ。
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