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牢屋

そうして、俺は牢屋に入れられていた。


檻の格子は鉄ではなく、何かの巨大生物の「骨」でできていた。 手錠もまた、骨製だ。


目の前には、鎧のような鱗を纏った巨大魚の看守がいる。


「お前は、『違法能力使用』の罪によって、3ヒラメ時間、そこで頭を冷やしておけ」


!?


まるで意味がわからない。 ヒラメ時間って何だよ。1ヒラメ時間は何分なんだよ。


だが、状況は理解した。 ここは、弁明をして同情を買う作戦でいくか。 もちろん、バインドスネークの集落で磨き上げた「未熟な子供」の演技で。


俺はイエローサーモンの目を潤ませた。


「ぼ、僕は……川から来たんです。 急に卵から孵ったと思ったら、激流に流されて……気づいたらここにいて……。 身を守るために必死だったんです。まさか、他の魚を追い払うための能力が、ここではダメだなんて……知らなかったんです。 僕は……僕はぁ……うわぁぁぁぁん!!」


目をうるうるさせて、涙(?)を流すように見せる。 ……もともと水中なため、泣くという行為が視認できるのかは謎だが、雰囲気だ。


さて、鬼看守の反応は……。












「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! お前は……なんて健気けなげな子なんだぁぁ!! グスッ。 親とはぐれて、一人で必死に……悲しかっただろうなぁ……グスッ」


!?


「よし、釈放だ!! 今すぐ出ろ! そして君、俺の養子にならないか!? うわぁぁぁぁん!!」


はい?


なんか、めっちゃ重いんだが。


前回の蛇の長といい、この世界の強者(魔物? 魚?)は、情緒不安定で重い奴しかいないのか?


特に、今回は、


俺はドン引きしつつも、謙虚な姿勢を崩さない。


「あ、ありがとうございます……。 でも、僕なんかのために、あなたの養子にさせてもらえるだなんて……そんな、申し訳なくて無理ですよ」


そうして、キッパリと(しかし下手に出て)拒絶し――。


「うぁわぁわぁゎああああああ!! お前という子はぁぁ!! こんな状況でも遠慮ができるなんて……!! なんてイイ子なんだぁぁぁ、うわぁわぁわぁわゎぁ!!」


ガチ泣きし始めた。 号泣しすぎて、水流が乱れている。 これじゃ、拒絶したこっちが悪者みたいじゃんか。


……いや、まあ、こっちが百パーセント詐欺ってるんだけどね。


というか、なんで水中なのに「涙」が出て、それが視認できるんだよ。 ……やはり、解せぬ。 この世界は、これまで偉人達が築き上げてきた物理法則や科学法則を、全力で否定しにかかっているらしい。


まぁ、いい。 日本の常識なんて、転生した時点で捨てた。


それよりも、今どうするかだ。 ただ釈放されるだけじゃつまらない。この湖の生態系や情報を知るために、トップに会っておきたい。


よし。


俺は再び目を潤ませて、訴えかけた。


「でも……僕は……そんな感情だけで釈放になるなんて、おかしいと思うんです。 僕が知らなかったとはいえ、罪は罪です。現に、他の人は牢屋にいるでしょう? 自分だけ特別扱いは不公平だと思うんです。 僕は……どうすればいいんでしょうか? 未熟な僕に、教えてください」


こんなもんか。 正義感に訴えかけて、判断を仰ぐ。 さあ、どう出る――?


「うwぁjしょxじょzのかぽkじゃpkpljkqじょjpmlmぁjn!!」


あ。 泣きすぎて言語中枢がおかしくなってるわ。 ダメだこれ。こっちから誘導しよう。


「僕は! あなたの一番上の、よくわからないけど、偉い人に判断を仰ぐべきだと思うんです!!」


理由もなしに、トップに会わせろと言ってみる。


「……わかった。うぅ……お前は本当に立派な子だ……わljlkhそいほいぼjxふおs」


よし、通じたぞ。 チョロい。


「では、今から会えるように手配してください。お願いします」


「うあjか『(以下、嗚咽)』」


こうして俺は、逮捕からわずか数分(数ミリヒラメ時間?)で、このエリアの支配者と面会することになったのだった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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