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始まり

「ジャ。ジャルルル……」


ジャク。ジャク。 ボギャ。 バクバク。


「ガ?」


ゴア。ドガッ。


「ガーー!」


ドガァ。


「ガ、ガァー。」


……ガ?


ガガ?


「ゴ、ゴアーー」


ガン。 ガンガン。


「ゴア、ゴー」


ガンガンガンガン。


「ギャ、ギャー。」


ジャク。ゴルゴル。 バクバク。


……痛い。


おい、お前。俺を、食べるな。 俺を、傷つけるな。


ん?


……。


あ。 そうだ。思い出した。


俺は、前世では「日本」という場所に生きていた人間だ。


だとしたら、俺は誰なんだ。 この体は、なんなのだ。


痛い。 お前は、誰なんだ。


俺は。 俺は誰だ。


「ガルガル。ジュルッ」


ガブガブガブ。


痛い。 痛い、はずなのに。


俺は、ここからどうすればいいのか。 俺は――。


俺は、生きるんだ。


その強烈な生存本能が、思考をクリアにする。


現状を分析しろ。 俺の体は、ラノベでよくある「魔物」ということか? ということは、ここは異世界だ。 俺はこの世界の、この訳の分からない体に転生したのだ。


ガブガブ。 ドガァン。


痛い。


……ん? 痛く、ない?


俺の体は、確かに今も咀嚼され、壊されている。 物理的な衝撃はある。 だが、「痛み」という信号が来ない。


まるで雲の上から、遠くの出来事を眺めているような、奇妙な不快感があるだけだ。 肉体と精神が、乖離している?


いや、違う。 この体自体が、そういう構造なのだ。


核さえ無事なら、肉体などただの消耗品。 不定形の肉塊。


あぁ、なんとなく理解した。 俺は多分、「変身系」の魔物なのだろう。


ガブガブ。 敵が俺を喰らい続けている。


俺は、変身するように、心を強く集中させた。


――変身。


ドプン。 体内の魔力が波打つ。


……おぉ? 頭の中に、ウィンドウ――『魔物図鑑』が表示された。


あぁ、わかった。 この能力。俺は、「俺が過去に食った魔物」に変身できるのか。


俺には、人間だった頃の記憶と知能がある。 そして、どの魔物に変身して、どう殺すかを選ぶ冷静さがある。


『選択』


ピッ。


脳に直接語りかける、システム音声のような響き。


『これに、変身しますか?』


――YES。


「ギャ?」


俺を喰らっていた目の前の魔物が、不審げに動きを止めた。


遅い。 これまでは、俺がエサだった。 だが、今度は俺がお前を喰らう番だ。


【変身:ポイズンスパイダー】


ボシュッ!


瞬時に、俺の体積が膨れ上がり、八本の脚が生える。


ゴキッ。


変身した直後、敵に足を一本折られた。 だが、気にしない。 人間だった頃なら、痛みで発狂していただろう。だが今の俺にとって、痛みは宇宙の彼方にあるノイズでしかない。


動ければ、それでいい。


ゴンッ。


俺は蜘蛛の顎を開き、敵の首筋に牙を突き立てた。


致死性の猛毒を、たっぷりと注入する。


「ギャ!? ギャーッ!!」


敵が暴れ、俺の体が近くの地面に叩きつけられる。 足がもう一本もげた。内臓が潰れたかもしれない。


だけど、気にしない。 どうせ、すぐに再生する。


それよりも、お前はもう死ぬ。


本当に、この変身機能に感謝だ。 その魔物が持つ「本能」や「過去の記憶」までインストールされる機能がついていて、本当によかった。


この蜘蛛の毒は、お前を確実に殺せる。 この蜘蛛の体が、そう訴えかけている。


さぁ、形勢逆転だ。 お前が喰らわれる番だ。


「ゴ、ゴギャァ……」


敵の動きが鈍り、痙攣し始める。 傷口から、ドクドクと鮮血が流れていく。


ただ、俺にはそれが「グロテスクな光景」ではなく、「美味しそうなご馳走」にしか見えなかった。


喰うには、もっと大きな口が必要だ。


【変身:ブラックバッファロー】


ボシュッ。


巨大な牛の魔物へと姿を変える。 これが、今の俺の手持ちで一番大きな魔物だ。


俺は大きな口を開け、弱った敵に食らいついた。


ジャグ。ゴキ。ジャグ。 ガブッ。


……ふぅ。


美味しかった。 跡形もなく平らげると、脳内にファンファーレが鳴った。


『アンロック:ブラックタイガー』


……へぇ。 さっき俺を食べていたこいつは、「ブラックタイガー」というのか。


【変身:ブラックタイガー】


試しに、変身してみる。 しなやかな筋肉。鋭い爪。


おぉ。 機動力がある、と体が言っている。 これなら、この森でも生き残れそうだ。


……さて。 結局、俺は何者なのだろうか。


まぁ、いい。 俺の種族名は、システム音声には表示されなかった。 おそらく、俺の同類を食べてアンロックしない限り、正式な種族名は分からないのだろう。


なら、とりあえず、俺がつけるか。


俺の新しい名前。


それは――『シェイプシフター』だ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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