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『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革王都裁判編〜』  作者: くろめがね


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41/41

第41話 理由の授業

41話です。

黒板の上に、

新しい見出しが書かれた。


「理由を書く」


それだけだ。


問いも、

目的も、

書かれていない。



副監督官が言う。


「今日は、

 理由を書く練習をします」


子どもたちは、

頷いた。


練習。

それは、

失敗していい言葉だ。


だから、

危険だった。



紙が配られる。


昨日と同じ様式。


違うのは、

一行だけ増えていること。


※理由は、

 後から変更してもよい。


安心のための一文。


だが、

それは罠だった。



「まず」


副監督官は、

穏やかに言う。


「今日、

 配給に行かなかった理由を

 書きなさい」


鉛筆が動く。


「忘れた」

「時間がなかった」

「用事があった」


どれも、

正しい。


正しい理由の型だ。


副監督官は、

机の間を歩く。


一つ一つ、

覗く。


頷く。


承認の動作。



例の子の机で、

足が止まる。


理由欄は、

埋まっていた。


副監督官が、

一瞬だけ安堵する。


「……何と

 書いた?」


子どもは、

答える。


「今は、

 行かなかった」


副監督官の眉が、

わずかに動く。


「それは、

 理由ではない」


子どもは、

首を振る。


「理由を書く練習

 だから」


副監督官は、

息を吸う。


「では、

 なぜ今は

 行かなかった?」


子どもは、

紙を見てから言った。


「書いたら、

 終わるから」


教室の空気が、

一段沈む。



「終わる?」


副監督官が、

聞き返す。


子どもは、

頷いた。


「理由を書くと、

 もう聞かれない」


それは、

事実だった。


誰も、

否定できなかった。


「でも」


子どもは、

続ける。


「まだ、

 分からない」


「だから」


一拍。


「終わらせたくない」


沈黙。


それは、

教室で

最も危険な沈黙だ。


授業が、

 失敗している沈黙。



副監督官は、

黒板に向き直る。


「理由を書くのは」


「考えを

 整理するためだ」


子どもは、

静かに言った。


「整理すると、

 減ります」


副監督官は、

振り返った。


「何が」


「考えが」


その言葉は、

小さかった。


だが、

正確だった。



副監督官は、

通達を読み上げた。


「本日より」


「理由を書く授業を

 定期化する」


誰も、

驚かなかった。


予想していたからだ。


だが――

その子は、

鉛筆を置いた。


紙の端に、

小さく書く。


「まだ」


理由欄ではない。

余白に。


副監督官は、

それを見た。


見て、

見なかったことにした。


見ない判断。


それが、

制度の成熟だった。



放課後。


私は、

報告を受けた。


紙に、

短く書く。


・理由を書く授業(定期)

・変更可

・正誤不問

・終了を作る装置


そして、

一行、

強く書く。


「余白が、

 唯一の逃げ道」


外で鐘が鳴る。


今日も王都は静かだ。


だが――

理由を書くことが、

 考えることの代用品に

 なった日だ。


誤字脱字はお許しください。

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