ふういん!
いえーい、皆は封印されたことある?
今まさに私がそれをされようとしている。
三人の神官の呪文詠唱とともに
勇者の聖剣が光を放った
気づけば知らない世界にいた。
そしてだんだんと薄れていく記憶・・・。
目の前に女がいた、緑色の長い髪に頭に妙な金属をつけている。
「大丈夫?私のこと分かる?」
誰なんだと尋ねると、女はホッと胸をなでおろす。
「封印は成功みたいね、わたしはアリッサ・中野宮、あなたの同居人よ」
そういえば私は「私」の名前がわからない
「ふふ、記憶無いものね?今日からあなたはポリエステル・中野宮
私と家族になるの」
「ちょっと待て!!なんだポリエステルって!!」
「?あなたのこの世界での名前よ?」
「つけちゃいけない名前をつけられてるのは何となくわかる!!」
私は大いに憤慨した。ポリエステルという名前だけは絶対に避けなくては・・・!!
「アリアンヌ、アリアンヌがいい!」
「あらかわいい名前ね、私ってネーミングセンス無くて(笑)」
その割には自分にはかっこいい名前つけてるじゃないか・・・。
ツッコミを入れたいがまだ状況が呑み込めない、ここはおとなしく
この女の言うことを聞いておくか・・・。
「それじゃ役場に生活保護申請に行くから」
アリッサという女に連れられ「役場」という施設に来た。
アリッサは一通り人々に挨拶を終えると
鬼のような形相でものすごい量の用紙に記入をしていた。
「これでこの世界での生きていく手続きは終了よ」
アリッサはだいぶぐったりしていた。どうやら書類仕事は苦手らしい
「毎月5日はラッキーデーよ!!」
その意味を知ることはもっと後になる。
さっきいたアパートとやらに戻ることになった
「これ表札ね」
「中野宮」と書かれた木の板を玄関にくくりつけた。
「あとは自由にしてていいから」
いやいやこの世界のことさっぱり理解できてないんだが!
私は言った
「状況を把握出来るだけの情報をよこせ!」
アリッサはきょとんとした顔を見せるとこう言った。
「ああ!この町のおいしい食べ物屋に興味があるのね!!」
彼女の能天気な思考に眩暈のようなものを覚えた
「だからこの世界のこと説明してくれ!」
そういった瞬間私のお腹がぐーっと鳴った。
「ほら、やっぱりお腹すいてるじゃない」
アリッサは二人分の身支度をした。
ラーメン屋という場所に来た
「この世界に来たならコレを食べないと絶対に損だから!」
嗅いだことのない良い匂いがあたり一面に充満していた
私は空腹でふらふらしていたがよくわからないものを食べるのに
少し抵抗があった。
「絶対おいしいから食べてみなよ」
「あっ箸の使い方は今は適当でいいから、徐々に慣れていこうよ」
アリッサが平気な顔で食べているということは
どうやら毒は入っていないらしい
「食べるときはいただきますっていうのよ、これはマナーね」
・・・・「いただきます」
私はラーメンとやらを食べた、いや飲んだというべきか
空腹すぎてそれはもう凄い勢いで食べつくした
「おいしい・・・・」
「でしょー!この世界に来たらまずコレ食べないと!」
アリッサはウッキウキだった
人の幸せが自分の幸せみたいなタイプだろうか?
だが不思議と悪い気はしない
「これはお金ね?食べ終わったらここに払うの」
ふーんこれがこの世界の通貨か
紙っぺらのようにも見えるが、真ん中に人の彫刻が施されている
かなり高度な文明のようだ
この世界の偉い人が描かれているのだろうか?
「食い逃げよー!!」
店の主らしき人物が突然大声を上げた。
どうやらマナー違反というものをしたらしい。
食い逃げと呼ばれた男が言った
「へっへっへ、今日こそ逃げ切って見せる!!」
「あーあまただよ」
アリッサがため息をついた
「この店隣に交番あるから、またすぐに捕まるよ」
「交番てのはこの町の治安維持部隊ね、城のガーディアンみたいなものかしら?」
そうそうそれだよ!そういう情報!私が欲しかったのは!
しばらくして食い逃げ男は本当にあっさりつかまっていた。
「この町悪事許さない」
警察官といわれる男が言った
「かつ丼くえよ」
食い逃げ男は連れ去られていった。
「この世界にはね、法律というものがあって
それを破ると罰せられちゃうんだ」
法律・・・!それは注意しなくては!罰されるのはなんかイヤだ。
「法さえ守ってればまあ何とかなるようにしといたからさ」
「じゃあそろそろ帰りますか、我が家に!」
もと来た道を戻るのかと思ったら全然違う方向に歩き出したアリッサ
「ちょっと!どこ行くんだ!」
「家に帰るんだけど?」
どうやら相当の気まぐれ屋らしい、もうほぼ逆方向を歩いている
「このままだと私が地理を覚えられない!まっすぐ帰ってくれ!」
もう神にもすがる思いで泣きついた
「もーしょうがないなアリアンヌはー、ん?この名前長ったらしいな、アリーでいいか!」
行動や発言がかなりちゃらんぽらんだなこの女は
このめちゃくちゃな女と同居するのかと思うと
頭がズキズキと痛んだ