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愛の万力

作者: イプシロン

天使の顔した淑女がひとり

 社交辞令の瞳が笑う

悪魔の顔した紳士がひとり

 金槌鉄砧(かなづちてっしょう)の瞳が嗤う


  青ざめた笑顔は喪服で

天使の顔した淑女がひとり

   「女の子みたいなかわいい()

 社交辞令の瞳が笑う


  黄ばんだ嘲笑は法服のよう

悪魔の顔した紳士がひとり

   「男子たるものかくあるべし」

 金槌鉄砧の瞳が嗤う


天使の顔した淑女がひとり

    それはわが母に似て

悪魔の顔した紳士がひとり

    それはわが父に似て


社交辞令の口が誘惑する

 「弱くていい守ってあげる」

  「華奢さは可愛さになるの」

   「優しい男は素敵じゃない」


金槌鉄砧の口が叱責する

 「弱さは男の性質にあらず」

  「虚弱は男の特性にあらず」

   「()さ男に浮かぶ世あらず」


天使の顔した淑女がひとり

 素肌の透けた長手袋の手

   さあ、ここへおいで

    可愛がるから守るから


悪魔の顔した紳士がひとり

 素肌の見えない黒鉄鎧の手

   さっさとこい、ぐずぐずするな

    鍛え直してやるんだから


ぼくは夢から醒めたくて

女神の影を求めたよ

  百年ののち夢から醒め

   長手袋に手を出した


      男であるまえに

      女であるまえに

  ぼくが影だということを

母はいまだに知ってはいない


ぼくは夢から醒めたくて

 天使でもなく悪魔でもなく

  百年ののち夢抱えたまま

心の眼で(うつつ)を見てる


ぼくは何にでもなれる影

   社交辞令の瞳が笑う

ぼくは何にでもなれる影

   金槌鉄砧の瞳が嗤う


ふたつの眼で(うつつ)を映して

何にでもなれる影

ひとつの体で現を感じて

何にでもなれる影

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