第64話 Gehenna
前回のあらすじ
ジェミニ―の力で生み出されたポルックス。しかし、彼女にも心が生まれていた。ポルックスの言葉に取り乱したジェミニ―はその隙に腹をケフェウスに刺される。
ジェミニ―は最後の力を振り絞って、国全体も破壊しかねない手りゅう弾、『ポルックスEX』を使用した。
「し、死ぬかと思った。」
ケフェウスは剣から手を離し、地面に尻餅をつく。
ジェミニーの手りゅう弾は、安全ピンを外されたものの、起爆装置であるレバーは、途中で引っかかったのか、完全に外れず、爆発することはなかった。
「結果オーライだったが。一足遅かったか…。『剣』として、まだまだ未熟だな。アタシも。」
ベラトリクスが、剣を振って付いた血をはらいつつ。自分の弱さに落胆する。
彼女は、ジェミニーが手りゅう弾から手を放すより先に、首を斬ってしまおうと考えて走っていた。
しかし、ベラトリクスがジェミニーの首を斬ったのは、彼女が手りゅう弾から手を放した後だったのだ。
「しかし、不幸の幸いってやつか?試作品つってたし構造に問題でもあったんだろうな。」
手りゅう弾を見ながらそう言うベラトリクスに、ケフェウスが言う。
「そうでしょうね。でも俺は、もしかしたらポルックスが止めたんじゃないかと、そう思ってしまいました。これ以上姉に、人を殺させないために。」
「素敵だな、その考え。」
ベラトリクスがそう言って、ケフェウスの手を引いて、彼を立ち上がらせる。
「ジェミニーは、『楽園』へと行けたんですかね。」
ケフェウスが、ベラトリクスにそう聞くと、彼女は首を失ったジェミニーを見て言う。
「正直な話。アタシは彼女が『楽園』に行けたとは思えないな。あいつは人を殺しすぎた。地獄に落ちるとしか思えない。」
「そうですか…。」
ケフェウスが悲しそうに言う。
その瞬間タビトの「危ない!!」という声が聞こえた。
ケフェウスとベラトリクスが、周りを警戒すると、緑色の、白い羽飾りのついた靴を履く星神教が物凄い速さで近づいてきた。
ケフェウスが急いで、ジェミニ―から剣を取ろうとするが、彼女の鎧のせいか、なかなか剣が抜けない。
ベラトリクスが、ケフェウスを守るようにして、星神教の攻撃を受ける。
そして彼女は、双剣で星神教を斬り裂く。
「良かった。」
タビトが、安堵していると、今度はベラトリクスが「危ねぇ!!」と叫ぶ。
タビトが、彼女の見ている方を見ると、黄色い魔法石が入った大盾を持つ星神教が、タビトに向かって走ってきた。
「おらぁ!」
タビトが星神教の盾をはじき、胸部に銃槍を差し込む。
「まさか、まだ星神教がいたとは、いつも十二座集が倒れたらすぐにどこかに、消えてしまうのに。」
ケフェウスがそう呟くと、突然。
彼の横をものすごい勢いで、矢が通過する。
「なんだ!?」
ケフェウスが矢が来た方向を見ると、木の陰に隠れた星神教がいた。
「まだいたか!」
ケフェウスが、星神教を追いかけるが、星神教は、まるで影に沈むかのように、もしくは粘土が溶けるかのように、消えてしまった。
「くそ!どこに行った!!」
ケフェウスが悔しがっていると、ベラトリクスが矢に付いた手紙を見つける。
彼女が手紙を開くとこう書かれていた。
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拝啓 ペテルギウス聖騎士団様へ。
私は星神教教祖。及び十二座集射手の座のサジタリウスと言う者です。
貴方達の行いは、我々に多大な影響を及ぼしました。
悪を滅ぼさんとするその意志。感服いたしました。ぜひ、私の館に貴方達を歓迎させてください。
敬具 サジタリウス
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その下には、『シェダル』からサジタリウスの館までの地図が描かれていた。
「こんなもの書いて、完全に罠だな…。」
「何を見ているんだ?」
ベラトリクスが冷めた目で紙を見ていると、オリオンが彼女に近づいた。
「ああ。この矢についていた紙だ。どう見ても罠だがな。」
ベラトリクスがオリオンに紙を見せる。
「確かに。罠だろうな。しかし、似非占いがなくなった今。あいつらから情報を渡してくれるのは正直ありがたい。」
オリオンは紙をたたみ、大声で皆に知らせる。
「次の目的地が決まったぞ!! 全員一旦、『シェダル』に戻ろう!!」
ケフェウス達は彼の言葉に従い、『シェダル』に戻った。
ケフェウスの思いつきで放たれた発言。「ジェミニ―が残していった武器、これらを持って帰れば、より強い武器が作れるんじゃないか。」というものに、したがって、羽根飾りのある靴。黄色い魔法石がある大盾。『カストール』と、ジェミニ―から取り返した『流星』を持って。
次回予告
『シェダル』へと帰って来たケフェウス達。彼らが持って帰って来た武器をもとに、城の鍛冶職人達は、彼らに新たな武器を作るのであった。
そして、その夜。アンドロメダが、ケフェウスの部屋へと入ってきて、話がしたいという。
次回 第65話 面と向かって




