第62話 共鳴
前回のあらすじ
『流星』を手に入れたジェミニーは、騎士達の命と引替えに、『流星』を購入してくれと交渉する。
なかなか、商談に乗らない騎士達をみて、花火がないからと思ったジェミニーは自作のクラスター弾『花火』を落下させ、村を燃やす。
爆弾の影響で壊れた家に潰されたケフェウスを助けようとしたアンドロメダに対して、ジェミニーは、『ポルックスに嫉妬した』という彼女の心情を公言する。
「貴方の力が、どうしたというの!」
焦りながら言うアンドロメダに対して、笑い声を出すジェミニ―。
「オレの担当する力『共鳴』は、オレの気持ちや思考を『送信』するだけではございません!アナタ方の気持ちや思考を『受信』することも可能なのです!
つまり、オレには、アンタの考えていることが分かるのです。」
「ま、まだ戯言を!嘘をついて、私の信用を落とす作戦ですか!!」
アンドロメダが、そう叫びながら矢を放つ。
しかし、ジェミニ―はその矢をよけ続けながら言う。
「ええ。ええ。分かります、分かりますよ。メダ様!アヌタは恐れている。ポルックスのような子供に、『嫉妬』していることが、ケフェウス様にバレて、嫌われてしまうことを。」
「っ!!」
アンドロメダが、苦悶の表情をして、汗を流しながら、ケフェウスを見る。
「さて、ケフェウス様は今、どう思っているのでしょうか?聞かせてもらいましょう。彼の気持ちと思考を。」
ジェミニ―がメガネを上げ、ケフェウスの事を見た後、意味ありげに笑う。
「ほうほう。なるほどなるほど。そうなんですねぇ。HUHUHU。」
「な、なんなんですか!何を考えてるって言うんですか!」
汗を流しながら、叫ぶアンドロメダに対して、馬鹿にしたように眉を曲げるジェミニ―。
「気になるのなら、直接聞けばよいのです。『相談』しなければ、何も解決いたしません。直接話さなければ、誤って伝わってしまいます。
そして、いつの日か、何もかもを失って、アンタは『後悔』するのです。」
ジェミニ―の最後の言葉は、暗い雰囲気があった。
しかし、今のアンドロメダに、それを気にする余裕はなかった。
「その五月蠅い口を閉じなさい!!」
アンドロメダは矢を放ち、風の魔法を使って、その矢の速度を上げる。
しかし、矢を撃つタイミングで、ジェミニ―は『魔法の威力を殺す石』を投げる。
そして、威力の下がった矢は、ジェミニ―に当たるが、ジェミニ―が痛がる様子はない。
「申し上げたと思いますが、『共鳴』は人の思考を読み取ることが出来ます。今まで、どうにかなっていた、アネタの風の魔法を使った不意打ちも、知っていて読み取れるオレには通じません。
それに…。」
ジェミニ―は黒装束の前を開き、下に着ていた軽量の鎧を見せる。
「オレ共が作った、軽量型鎧『大切な家族』。その程度の矢ではオレに傷を付けることなど、不可能。」
「ちっ!!」
アンドロメダが、彼女らしからぬ舌打ちをする。
ジェミニ―はなお、煽りを続ける。
「元より、魔法で戦うこと自体、『オワコン』なのです。こんな石ころで威力がなくなるものを、魔力を使って使用する。そして、魔力が切れてしまえば、自身の体すらまともに動かせなくなってしまう。さらには、わざわざ毎日魔法を使わなければ、魔力を貯蔵することが出来なくなる。実に不便です。」
そして、ジェミニ―は手を2回叩く。
「それに比べて、『魔法武器』は使用者の魔力は関係ない。魔力が切れたら魔法石を交換するだけ!これこそ、化学と魔法学の進歩!! 特別に、メダ様も『体験』してみてください!ここの村長にも『プレゼント』した、ダムダム弾。『楽園』を!!」
ゆっくりと近づいてきた戦車の、胴体下部。その前位置に付いた2つの副砲であるガトリング砲に、『星神教』が1人ずつが乗り込む。
そして、ガトリング砲から弾丸を連射する。
「危ない!!」
タビトが、アンドロメダの前に走り、弾丸から彼女を守る。
ケフェウスや他の騎士など、盾を持たない者は、急いで戦車から距離を置く。
しかし、何人かは弾丸を食らってしまう。
弾丸を食らった騎士は、その場に倒れ、傷を抑えるが即死した者はいない。
ジェミニ―が両手を広げ言う。
「この『弾丸』は、鉛と風の魔法石、それに火の魔法石を混ぜて作った特殊な物です。着弾時に鉛は変形し、体に大きな損傷を与えつつ、摩擦を増やし、さらに風の魔法石で、弾丸の進む方向と反対に風を出して威力を完全に殺し、99.9%の確率で体内に留まることを実証済です。そして───」
ジェミニ―が説明をしている間に、弾丸を食らった騎士は、傷をおさえながら「熱い熱い熱い!!」と叫び始める。
「───火の魔法石の力で、徐々に、確実に体を焼いていきます。いずれ彼らは、『あの日の家族』のように、踊り狂って『楽園』へ向かいます!」
虚空へ向かって、笑い声をあげるジェミニ―に、タビトが怒りの声を上げる。
「やめろ!! 無差別な爆弾に、不必要に人を苦しめる弾丸。非人道にも程がある!! そんな物を使うなんて許さない!」
「おやおや、タビト様。アヌタ、随分お怒りですね?こんな高威力の武器を見て、他人の苦痛を心配するなんて、何か辛い『過去』。おありですか?」
ジェミニ―はメガネを上げ、タビトを凝視する。
タビトはその視線に、自身の過去の事を考えないように必死に集中した。
しかし、そんな彼にジェミニ―は「HUHU」と笑った。
「ほうほう。なるほどなるほど。アナタにそんな過去が。」
「なっ!?」
過去がバレたと、焦り、その過去を意識してしまうタビト。
そんな彼にジェミニ―は笑い声をあげる。
「HAHAHA!実に単純な方ですね。タビト様は!すこし、カマをかければすぐに、それを考えてしまう。
なるほどなるほど。アニタは昔、ただの一般兵でした。装備は周りの騎士サマ同様、剣と盾。しかし、アナタは『優しかった』。戦争で死亡する仲間や市民を見て、彼らを守るべくアンタは『盾』となった。
ですが、正直。使える『盾』ではない様子。アクエリアス様やアリエス様、ヴァルガリア様との戦いでは、そこにいるケフェウス様とメダ様を除いて、町の人は皆、『楽園』へと旅立ち。騎士の負傷はそれ以上。
市民や村人を守れた時は、ピスケス様やタウルス様のおかげ。
そういえば、ヴァルガリア様との戦いでは、アンタの手で、市民を『楽園』へと旅立たせてましたね。
アナタ…。何を守れたんですか?」
ジェミニ―の言葉に、タビトの心はズタズタに傷つけられてしまう。
その苦痛に耐えようと、タビトが、ジェミニ―から意識を放すと、ジェミニ―は黒装束の1人から細長い、布に包まれた物を貰う。
「苦しそうですね、アヌタ。
ああ…。助けられなかった…。お母さん、お父さん。ポルックス…。
HAHAHAHAHA!ですが、ご安心を!すぐにお渡しします。オレも喉から手が出るほど欲しい『楽園』への片道切符。」
ジェミニ―が布を取るとそれは、ノコギリのような形をした剣だった。
「重装備をした相手に、何度も斬りかからないといけないこと、ありますよねぇ。
そんな、アネタにおすすめ!自動式回転刃搭載片手剣、『姉の怒り』。
自動で刃が回転して、斬り続けるので、もう何度も斬りつけることはありません。一度刃が当たればね。もう───」
ジェミニ―は、タビトに斬りかかる。
タビトが急いで、盾でその剣を防ぐが、ジェミニ―は「スーーー」と言いながら剣を押し付ける。
すると徐々に、タビトの盾は斬られ始める。
タビトが急いで盾から手を放し、バックステップでジェミニ―から距離を取る。
ジェミニ―は、タビトの盾を斬り裂いて、「っと、斬れた。」と言った。
「ま、まじか…。俺の盾が、あんないとも簡単に斬り裂かれるなんて…。」
絶望と恐怖するタビトを見て、再びジェミニ―は笑う。
「HAHAHA。アニタの『絶望』と『恐怖』が伝わってきます。
この程度で、『恐怖』だと!! 姉の手も掴めず、ただただ焼かれながら死んでいったポルックスに対する愚弄か!!
ですが、『恐怖』なんてする必要ありません。ただ、受け入れればいいのです。」
不気味な音を立てながら回転する剣を持って、じりじりとタビトに近寄るジェミニ―。
そんなジェミニ―を、ベラトリクスが奇襲する。
ジェミニ―は、回転を止めた剣で、その攻撃を受け止める。
「おっと、死角からいきなりとは、油断しました。」
その言葉を聞いて、ケフェウスは笑みを浮かべる。
彼は閃いた。彼女達の戦いに決着を付ける作戦を。
次回予告
様々な兵器と『共鳴』を使い、騎士達を追い詰めるジェミニー。
ケフェウスは、そのジェミニ―にある言葉を告げる。
そして彼女は、ジェミニ―との決別を、心に決める。
次回 第63話 ジェミニ―との決別




