第51話 盲目たる恋
前回のあらすじ
タビトの射撃によって、住民に被害が出てしまったものの、アンドロメダの機転によってヴァルガリアを倒すことに成功する。
しかし、死んだヴァルガリアは影武者で、本当のヴァルガリアが姿を現した。
「アタシ様こそが!『星神教十二座集。乙女の座』!『ヴァルガリア』様って訳ですわ!!」
ヴァルガリアはそう言うと、「アハハハハ」と笑いながら、足元のスピカの遺体を踏みにじる。
そんな彼女の姿は、いつの間にか、紫髪の時に来てきたボロ布を来ている姿ではなく、黒いゴスロリと、黒いブーツの姿になっていた。
「ヴァルガリアが、偽物!? それに、なんで姿がそんなすぐ変わるんだ!?」
目を擦るケフェウスを見て、スピカの遺体を蹴飛ばして、ニヤッと笑うヴァルガリア。
「なにアンタ。目なんか擦ってですわ。夢でも見てたみたいな反応だな。ですわ。」
彼女は、やれやれと言うふうに首を振る。
「さっきまで、アタシを弱者の奴隷とでも思ってたんじゃねぇですの?だから勝手に、真実の姿を無視してイメージだけで人を見るですわ。」
「貴様。影武者を作った癖になぜ、そいつを庇うような動きをしたんだ!」
疑問を叫ぶオリオンに、ヴァルガリアはバカにしたような顔で言う。
「決まってるだろですわ。アンタら騎士のバカ共は、弱者を表立って攻撃しないって知ってるですわ。だからああやって動けば、スピカのクソ女への殺意も高まるし、アタシ様が疑われにくくなんだろうがよ。ですわ。」
何も言えないオリオン達を見て、ヴァルガリアはさらに続ける。
「本当にバカ、バカ、バカですわ。ただの偽善で弱者を攻撃しないって言うからこうなるんですわ!はなから殺しておけば良かったものをですわ!どうせ、結局は弱者を見捨てるくせに!」
ヴァルガリアの発言に、カッとなるケフェウス。
「そんな訳ない!俺達は、力のない人々を救う!」
彼の発言を小馬鹿にするような態度をとるヴァルガリア。
「救えねぇ!ですわ!弱者は救われねぇから弱者なんだよですわ!」
「そんなことない!!」
怒りを見せるケフェウス。そんな彼をヴァルガリアは再び小馬鹿にする。
「ならまず、この『ポリマー』の住民を救ってみろですわ!最も、1人はそこの鎧のバカ男が、1人はそこの弓を持つバカ女が殺しちまったけどな!ですわ。」
「アハハハハ!」と口を大きく開け下品に笑うヴァルガリアの言葉に、暗い表情をするタビト。
「馬鹿にしやがって!!」
ケフェウスが、ヴァルガリアに向かって走る。
それを見てヴァルガリアは言う。
「タビト!!『アタシ様を守り、アタシ様の為だけに戦う騎士になりなさい!!』ですわ。」
ヴァルガリアがそう言うと、タビトは彼女を守るように移動し、ケフェウスの攻撃を盾で防ぐ。
「なっ!」
驚くケフェウス。
「何やってんだ!お前!」
そう叫ぶベラトリクスに、タビトは言う。
「分からん。体が、勝手に…。」
困惑する2人にヴァルガリアは呆れたように言う。
「言ったじゃない。ですわ。『絶対服従の命令』で、アンタを操ったのよ。ですわ。でも、意識が残ってるなんて珍しいなですわ。」
そして彼女は、ベラトリクスを指さす。
「タビト!『あの双剣の女を、殺しなさい!』ですわ!」
「なっ!」
ヴァルガリアの言葉に、驚くタビト。
「や、やめろ!!」
タビトは抵抗するが、タビトの体は、ベラトリクスに銃槍を向けようとする。
「くっ…。」
タビトがベラトリクスに向かって、弾丸を放つ。
「ちっ!」
ベラトリクスはそれを避けるが、追撃するように彼女へ向かって走るタビト。
「おい!タビト!しっかりしろ!!」
ベラトリクスが槍を避けつつ、タビトを説得する。
しかし、タビトは止まらない。
「やめろ!やめてくれ!!」
タビトも抵抗はしているものの、体はいうことを聞かない。
「ちっ!仕方ねぇ!タビト!ちょっと眠ってろ!!」
ベラトリクスが、タビトの首を蹴る。
タビトは地面に倒れ、少しの間を置いて。
「ベラトリクス。すまない。」
体の自由を取り戻したタビトが、立ち上がる。
「衝撃で、どうにかなるみたいね。」
ベラトリクスが、ヴァルガリアを睨む。
ヴァルガリアは少し驚いたようだった。
「まさか、『絶対服従の命令』から解放されるやつがいるなんて…。」
しかし彼女は、すぐさま小馬鹿にしたように笑う。
「けど、再び命令すればいいだけの話!ですわ!」
それまでの光景を見て、ケフェウスは下唇を噛む。
「今まで、俺達を操って来なかったから油断した。俺達も操れるならどうすれば…。」
「ケフェウス様、ケフェウス様。」
突如、背後で自分を呼ぶ声がして、振り向くケフェウス。
「ポ、ポルックス!」
ケフェウスの背後には、建物に身を隠したポルックスがいた。
ポルックスは、ケフェウスに向かって手招きする。
ケフェウスは、彼女の元へ向かった。
「なんだ?ポルックス。それになんでこんな所に?」
質問するケフェウスに、ポルックスは答える。
「戦えません、ボクは。けれど、発見しました、彼女の対策。」
「何!? それはなんだ!」
ポルックスの言葉に、驚くケフェウス。
ポルックスはニヤッと笑い、小さな物を2つ取り出す。
「これは?」
ケフェウスの言葉に、ポルックスは答える。
「耳栓です、これは。周りの音は全部遮断されます、これさへあれば。」
「耳栓?」
ケフェウスは、耳栓を受け取りつつそう言った。
ポルックスは言う。
「聞かなければいいのです、彼女の声を。操られないように、我々が。」
ポルックスの言葉に、ケフェウスは希望を持った、笑顔を見せる。
「なるほど!ありがとうポルックス!!」
耳栓をつけケフェウスは、走る。
それ故に、彼女のつぶやきに気が付かない。
「あとは頼みましたよ、貴方に。」
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「ヴァルガリア!! もうお前の力を喰らわないぜ!耳栓をつけたからな!」
ケフェウスが、ヴァルガリアに剣を向けそう言う。
彼女が何を言っているかは分からない。しかし、驚いている様子だ。
ケフェウスが、ヴァルガリアに斬りかかる。
ヴァルガリアはギリギリでそれを左に避けて、ケフェウスの後ろへ逃げる。
ケフェウスが振り向くと、彼の左後ろにヴァルガリアの姿があった。
ケフェウスは、ヴァルガリアを斬ろうとする。
彼女が何かを言っているが、ケフェウスには通じない。
あと少しで、刃が彼女に当たる。その寸前で、ケフェウスは誰かに押し飛ばされた。
彼を押したのは、ベラトリクスだった。
ケフェウスが不思議に思って、耳栓を取る。
するとすぐに、ベラトリクスの怒声が聞こえた。
「何やってんだケフェウス!! 相手を間違えるんじゃねぇよ!!」
ケフェウスはその言葉の意味が分からない。
ベラトリクスの指さす方を、見て驚くケフェウス。
ついさっき、斬ろうとしていたヴァルガリアの姿が、アンドロメダの姿に変わる。
「えっ!?」
驚くケフェウスに向かって、下品に嘲笑う声が聞こえた。
ケフェウスがその声の方をむくと、そちらにもアンドロメダの姿があった。
「メダが2人!?」
「何を言ってんだ!あっちはヴァルガリアだろ!」
ベラトリクスがそう指摘すると、そのアンドロメダがニヤッと笑い。ヴァルガリアの姿になる。
「どういうことだ!?」
ケフェウスの疑問にヴァルガリアは答える。
「アタシ様の能力。『盲目たる恋』。他人に幻影を見せる力よ。耳を塞いでちゃあ、幻影を見破れねぇですわね!」
ヴァルガリアは再び「アハハハハハ!」と笑う。
次回予告
目を制限すれば操られる、耳を塞げば騙される。
そんな最強に思えたヴァルガリアの力。しかし、彼女は大きなミスを起こす。
次回 第52話 ヴァルガリアとの決戦




