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何も進んでいませんが……忘れられそうなので。

「探偵って言っても難事件を解決する……なんて事はなくて、人探しとか、ペット探しとか、浮気調査とかが主な仕事」

 そう言いながら神崎はテーブルの上に名刺を置いた。

 隣の市にある駅前の住所地がその探偵事務所の所在地として書かれていた。

 ネットの広告などで見たこともあるが、実際に従事している人に会うのは初めてだ。


「そうなんですね」

 見知らぬ男性を自宅にあげるのは躊躇われ、在と和弘はまた神崎を連れて駅前まで戻り、カフェへと入った。

「危ない橋も、ちょっと渡るかな、って感じなんだけどこの前その橋を渡るのに潜入した先に大智君がいたんだ」

 運良く取れた店の隅の席でアイスコーヒーで喉を潤しながら神崎は先を続ける。

「依頼者への守秘義務があるから場所は今は言えないんだけど、なんだか事件に巻き込まれてそこに閉じ込められてるって言ってた」

「そうですか」

 在は目の前のカフェラテのカップをじっと見つめた。

 夕べ来たメッセージと神崎の証言。

 一先ず大智は生きているのだ。

「良かっ……た……」

 つっ、と涙が一筋、在の頬を滑る。

 思わず手で顔を覆い伏せた在の頭を和弘が撫でる。

「必ず戻るって伝えて欲しいって。念写でメッセージを送ろうとしているけど無事に届くか分からないからって言ってたよ」

「夕べ届きました。あれ、大智の異能ですか?」

 静かに泣いている在の代わりに和弘が尋ねる。

「いや、あれは同じように閉じ込められている子達がいて、その中の一人が頑張ってた」

「そうですか…」

 どんな理由があってそんな子どもが閉じ込められているのか分からない。

 神崎は複雑そうな表情を浮かべているので理由を知っているのかもしれない、と二人は思った。

「ちょっと、俺も仕事じゃないのに、お節介かな、と思ったんだけど、大智君が真剣に依頼してくるのと、それに、君の……八草君の名前に興味が合って。まあ、ついでかなって」

「え?名前?」

 目元の涙を拭いながら在は顔を上げた。

「君のお兄さん、八草結月……くん、かな。今は警察庁にいる?」

「ああ、はい。ご存じですか?」

 在と兄は十の年の差がある。

 両親が比較的若い頃に生まれたのが兄で、随分と落ち着いた頃に生まれたのが在だ。

 大人三人で在の子育てをしていたようなところもあり、随分過保護に育てられたと思う。

「そうですね。どこかの部署の事務方ですけど」

 詳しくは教えて貰っていない。

 事件を捜査するわけじゃなくて、書類仕事が主だよ、と結月は良く言っている。

 そもそも在は兄が就職するまで警察官は全員刑事だと思っていたくらいだ。

「大学が一緒で、学部も一緒だったから少し顔見知りで。名字と住所を聞いてもしかしたら、って思ったんだ。ちょっと珍しい名字だから」

「そうですか。兄に伝えておきます」

 兄の友人ならとますます神崎への警戒心が解ける。

「うん、まあ、同じ大学を出てあっちは立派な国家公務員様で俺は浮気調査専門っていうのも恥ずかしいから、なんだけど」

 少し困った顔をして神崎はぽりぽりと頭を掻いた。

「今は連絡取られていないんですか?」

「そうだね、めちゃくちゃ仲が良かったわけでもなくて……でもまあ、都合が合えば飯ぐらいは行きたいかな」

「分かりました。名刺、兄に渡しておきます」

 先ほど貰った名刺をポケットにしまおうとした在を神崎は制した。

「あ、だったら」

 神崎はポケットからもう一度名刺入れを出すと一枚取りだし、裏に何やら書き付ける。

「俺個人の携帯番号書いといた。こっち渡してくれる?」

「はい」

 受け取る際に、こつりと指先が触れる。

 一瞬だけ、大智の顔が伝わってきた。

(え?)

 大智だと、思う。

 でも。

 精神感応の異能をやたらめったら使うことはない。

 危険かどうか判断したり、そういう理由がないとき以外は使わないのだ。

 今は触れてしまったのもあるが、神崎がわざと在に読ませたような節もあった。

 判断が付かない。

 あとで和弘に相談しなければ。

 でも。


 神崎の中で大智だと思っているらしい人物は、昨夜会った宇佐見に似ていた。

 どうして?

 どうして神崎は宇佐見のことを大智だと思っている?

 在は少々混乱していた。


「じゃあ、次の仕事があるんで」

 アイスコーヒーを飲み干して、神崎は立ちあがった。

「あ、はい。ありがとうございました」

「いや、八草……結月くんによろしく」

「はい」

 在は曖昧に頷いた。



「あっちーなー」

 カフェから出ると神崎は呟いた。

 九月とは言え毎日夏日が続いている。

 そうして、左耳からワイヤレスイヤホンのような物を取り出す。

「八草、在。吐きそうになるくらい強い異能の持ち主だな」

 異能を防ぐためのプラグだ。

 実際に在の力を防ぐため、出力を最大にしたおかげでかなり頭痛がする。

 今日はもう異能がらみの仕事はしたくない。

 けれど。

 そのシールドから僅かに漏らした『情報』を、在は上手く読み取ってくれたようだ。

 昨晩、宇佐見は在と接触したらしい。

 だったら、今見た映像に戸惑いを感じているだろう。


 さあ、どう動く?

 宇佐見?

 神崎は眩しすぎるほどの青空を無意識に仰いだ。


次からは大智のターン予定です。

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