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「どうした?顔」

 明くる日。

 和弘と待ち合わせた時間に駅へ行くと大きなガーゼが貼られた在の顔を見た瞬間、和弘は顔色を変えた。

 手首に巻かれた包帯にも気付いたようでますます表情が険しくなる。

「昨日、かずの家から帰るときにちょっと転んでさ」

 はは、恥ずかしかったよ、と笑うと、和弘は一瞬考えた後、在の怪我をしていない方の手を取り、在の自宅方向に歩き出した。

「今日は中止」

「え?」

「そんな顔してるのに、出掛けられない」

「……そんな顔って……」

 人の顔、変な顔みたいに言うなよ、と在がむくれると、そうじゃない、と和弘は首を振る。

「痛々しいの。分かる?」

 こんな痛々しい在と一緒に出歩くなんて……、そしてやはり無理やりにでも泊めていればこんな目に合わせる事は無かったのに、と、和弘は昨夜自分の言動を悔やむ言葉を口にする。


「大丈夫だよ。ちゃんと病院も行ったし」

 和弘の強引な態度に若干早足で着いていきながら在は言う。

「?あの時間近所の病院開いてないだろ?」

 この辺はクリニックばかりだからそう遅くまで開いているところはない。せいぜい19時が良いところだ。

「うん。親切な人が国道沿いの救急診療所まで送ってくれたから」

「は?」

 立ち止まり、思わず握っていた在の手首を引っ張る。

「痛い……」

 在が顔をしかめて呟いた。

「あ、ごめん」

「コンビニに寄ろうとして同時に入ってきた車に驚いて急ブレーキかけたら転んだんだ。僕が勝手に転んだのに、病院に連れて行ってくれて、治療費も払ってくれたよ」

「お前なあ……」

 はあ、と和弘は大きくため息をついた。

「そんなの誘拐犯の常套手段だろ?」

「でも……『読んだ』けど、害意や邪な感情は読み取れなかったから」

 相手に害意があれば逃げればいいと、在は言う。

 幼い頃からそういう手合いの者に声を掛けられる事は多々あった。しかし、この『異能』の力であらかじめ感じることが出来るのでそういう事件には巻き込まれずに済んできた。

 特に今回はコンビニの駐車場だ。

 助けを求める先はあった。

 けれども『読んで』もあの二人からはそういう黒い感情は読み取れなかった。

 だからそのまま救急病院へ連れて行ってもらったのだ。

「在……」

 和弘はそっと在の頬に貼られたガーゼの上に手を添えた。

 ガーゼからは何も読み取れない。

 強いて言えば医師か、看護師かの、治そうという意思が読み取れる。

「どんな人?本当に何もされていない?」

「うん。えっと、名刺ももらったし。どこかの研究所の所長さんだって」

「研究所の所長が夜遅くに出歩くのか?」

「……そんなの分からないじゃない。運転していた人もその所長さんも仕事帰り、みたいな格好をしていたよ?」

「ふん」

そう言ってかばう在に不服そうにして和弘は頬から手を離す。

「……とにかく、お願いだから、あんまり危険なことはやめて?在。大智に続いてお前までいなくなったら、俺、どうしたら、いい?」

「あ……ごめん」

 そうだった。

 自分たちは今、親友が行方不明になり探しているところだった。

「気をつける」

「とにかく、今日は、お前は帰れ。俺一人で取りに行くから」

「でも……」

 話しているうちに在の家に着いた。

 すると、玄関の前に佇んでいる男性がいた。

 年の頃は昨夜会った宇佐見くらいだろうか。

 チャイムに手を伸ばしかけているので、それを在は制した。

「あ、あの。何かうちにご用ですか?」

「え?」

 男性は在の呼びかけに、こちらを向いた。

「……えっと、八草君?と、そっちはもしかして杉山君?」

「なんでしょう?」

 和弘がすっと、在を背中に隠し、男性に返事をした。

「大智君に頼まれて、来た」

「え?」

「君たちに伝えて欲しいって。無事だって」


 男は神崎朗かんざきろうと名乗った。

 職業は探偵だとも。




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