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X上での企画#現代異能バトルBLに参加したくて書き始めた作品です。

よろしくお願いします。

「あー、今日は何日だ?出席番号は……八草か。八草、この問1の答えを」

 黒板の前にいる教師から名前を呼ばれ、八草在やぐさありははっと、意識を授業に戻した。


 しまった、聞いてなかった。


 ああ、と教科書に視線を落とせば隣の席の男子生徒が囁く。

「宿題の52ページの問1」

 慌ててノートを開いて答える。


「はい、正解。じゃあ次を……」

 教師が次の生徒を指名する。

 在は隣の席の生徒に「ありがとう」と囁いた。

「……いいけど、落ち込んでんの、みてられなくて」

 男子生徒は少しだけ顔を赤らめぽつりと呟く。

「ごめん、大丈夫……だから」

 そういうと今度はきちんと授業に集中しようと前を向いた。


 放課後。

 部室に顔を出す。

 正確には同好会だから部室では無いが旧校舎の使っていない教室を一室借りて機材を置いている。

『写真同好会』

 普通の高校では部として存続してそうな会だが、在が通う私立高校では会員が在を含め四人しかいない。在達二年生が三人と今年入ってくれた一年生だ。

 五人以上いないと部には慣れない。

 昨年は三年生が二人いたのでかろうじて五人で部だったがその先輩が卒業すると同好会に降格してしまった。

 一人だけの一年生はたくましく、万が一来年新入生が入らなければなんとか友人を幽霊会員に仕立て会の存続をもくろんでいるらしい。

 顧問をかって出てくれた教師も潰すのは惜しいと言う事で何くれと無く協力してくれる。


 部室には隣のクラスでもあり、数少ないこの会の会員である杉山和弘がすでに来ていた。

問題集と辞書を広げている。

 校内のコンビニで買ったであろう菓子と飲料も並べられている。


「自習室じゃないんだけど」

「えー、だって自習室より落ち着くし。自習室じゃ食べ物持ち込めないし」

 広げっぱなしだった本類を少し脇に避け和弘は在の席を作る。

「まあ、パネルの準備は来週からの予定だからいいけど。今日は活動日じゃないし」

「お前だって来てるじゃん」

「……まあ、ねえ」

 鞄からノートと筆箱を出しながら、在は言った。

「ここに帰ってくるかもしれないし」

「……一ヶ月、かあ。どこで何してるんやら」

 二人で教室の隅にぶら下がっているカレンダーに目をやる。

 今は二学期の授業が始まったばかりの九月上旬。

 再来週の週末には文化祭が予定されていてそこには大きく花丸が書かれていた。



 その花丸を書いたこの写真同好会の会長でもあり、在と和弘の幼馴染みでもある貴崎大智きさきだいちは先月上旬に行方不明になった。

 会のメンバー四人で恒例となっている夏休みの撮影会合宿を行った。

 学校から二時間ほど電車に揺られたところにある海辺の公共施設を利用した合宿で、天の川の撮影が目的だった。

 二泊三日の撮影会は天候に恵まれ、なんとか目的の天の川の撮影もでき、さあ、帰ろうと言うときに大智は寄るところがあるからと他のメンバー三人と別行動をとったのだ。

「じゃあ、週明け部室で」

 今回撮った写真の選定を行う約束をしそう言って別れた。

 けれどもそれを最後に、大智は消息を絶ってしまった。


「……声、聞こえない?」

 和弘が在に訊ねる。

「うん。まったく、全然」

 諦めたような顔で在は首を振った。


 在の『異能』は精神感応テレパシーだ。

 そんなに力が強いわけではないので誰彼の心の声が聞こえるわけでは無い。

 相手は家族や仲の良い友人でしかもかなり強く念じなければならないのでとても疲れるから滅多に使うことは無い。


 この世界に住む人の約10%が『異能』と呼ばれる力を持っている。

 それは例えば「足が速い」「絵が上手く描ける」とほぼ同義の力で必要以上に特別視される力ではなかった。

 この写真同好会の一年生は『念写』の力を、和弘は『接触感応サイコメトリー』、大智は『念動力』を持っていた。

 こう書くと人類の百パーセントが力を持っているように感じるがこの力は大人になるにつれて弱まり、成人を過ぎても持っている人が10%になるということだ。

 なので、国も世界も初等教育まではこの『異能』の力をコントロールさせることに重きを置いている。


 和弘も大智が消息不明だときいたとき合宿中に大智が触れた物に触れその残留思念を読み取ったが特に変わった様子はなかった。

 なので、今回の失踪は大智の意思では無く事件か事故に巻き込まれたのだと二人は思っていた。


 在は気を抜けばぼんやりと大智の事を考えてしまう。

 先ほどの授業中もそうだ。

 一人でいれば心が苦しくなる。

 だから、活動日でも無いのに部室に来たのだ。

 和弘がいることは確信していた。

 実際二人は大智が失踪してから学校のある日は毎日ここに来ているのだから。


 三人は保育園が同じでそこからの幼馴染みだった。

 母親同士が仲良かったため、よく三組の家族で出掛けていた。

 誰かの両親が仕事の都合で遅くなれば誰かの家で待つ。

 兄弟の様に育った。

 小学生低学年までは相変わらずの家族ぐるみの付き合いがあったが、高学年になり、中学になり、三人バラバラの部活に入ると交流が無くなってしまった。

 親たちは相変わらず仲良くしていたが、そこに在達が混ざることは無くなった……と思っていた。


 高校受験前のこの学校の説明会会場で和弘と大智に会った時、在は少しびっくりした。

二人がこの高校を選ぶとは思わなかったからだ。

 中学の成績も悪くはなかったから県内の公立の進学校を目標にしていると思っていたのに二人ともこの私立高校が第一希望だと言う。

 行きたい大学の推薦があるのだと口を揃えて言った。

 在自体は父親がこの学校の卒業生で私立に行くならここだと薦められていただけで特に強い希望があったわけではない。

 でも、大智と和弘と一緒ならいいかも、と、在もこの私立高校を第一志望とすることにした。

 また三人で仲良くやれれば。


 一年生の時も二年生になっても同じクラスになることはなかったが、同じ同好会に入り放課後は常に一緒にいた。

 在はここ学校のOBである父親が在学中は写真部だったこともあり、父親のお下がりのカメラを持って入部した。

 思ったより部員が少なかったので在は二人を誘うことにした。

 中学までサッカーをやっていた大智は終盤足を痛めたらしく高校でサッカーを続けることはなく、和弘は部活に入る気はなかったようだが、二人とも在の頼みだからと快く入部したのだ。

 今時の写真部はきちんとしたカメラを持たなくてもスマホで気軽に撮った写真でも認められるのも素人の二人が気楽に入部できた理由だった。

 いわゆる、『陽キャ』と呼ばれ、クラスでも中心にいる和弘。

 元スポーツマンだけあり、爽やかな態度でこちらも人気のある大智。

 そして、大人しめにいつも二人の一歩後ろでにこにこしている在。

 この男子校で密かに『姫』ポジションにいることは在本人は気付いていない。


 『姫』を守る二人の『騎士』


 こうして、三人は、高校に入り小学生以来の友好を深めていったのだった。


次回の更新は5月以降になります。すみません。

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