ゆめ工場で業務上横領のは何が悪い
僕も遂に、つまらない大人になった。いつからつまらなくなったのか?覚えられなくかった。
就職氷河期で仕事に努めたのは、ありがたい話だ。命を賭けて、やっと見つかった勤め先は、なんとゆめ工場だった。マネージャーは精霊、ボスは白雪姫、シンデレラも共同経営者らしい。けど、あくまでも都合上の話だった。マネージャーより偉い人を見たことすらない。
僕のいる部署は5人で、半月に1回のペースでシフトが組んでいる。毎日12時間、生産ラインで立ちこんで、ゆめを組み立てるばかりだった。基本的に公休日以外に休みがなく、初勤務の8月は30日間も働いた。
こんな数日、数ヶ月、数年間もあっという間に過ぎて、僕もベテランになって、ラインリーダーになって、新人の研修指導にも任された。でも、マネージャーより偉い人をまだ一度も見たない。
ある日、生産ラインに不具合があって、私はマネージャーの指示でラインを止めた。サボる余地なく、すぐに不良品のゆめをラインから取り除く作業が始まった。不良品のゆめがときにぷにぷにで、ときにマシュマロのように柔らかい。優良品のゆめを触ることが禁じられたから、今回は初めてのゆめ触りだ。
触って、ゆめの値段が高いから、工場を出たとしても、買ったことない。こうしたことから、一度もゆめを試したくなる。目を閉じて、思い切って不良品のゆめに潜り込む。
目覚めたら、生産ラインの影ですらなくなった。
朝日と手を左右に振り、夕陽を眺め、青空の下で静かに佇み、気流に体を触れ合われるのは何年前のことだろう?こんな僕が仕事を考えずに、見渡す限り果てしのない草原で朝から晩に立った。
夜になって、流れ星が空を横切り、光が私の目を刺したようにまぶしい。
「夜明珠を割ったら、元の世界に戻るよ」
再び目を開いたら、隣に話せる象がいた。「夜明珠」という黒くて紫の光のあるたまが渡された。
「お名前は?」
「夜明珠を割って再び会ったら、教えてあげる」
突風が象を吹き飛ばした。
僕が夜明珠を持って、一夜中前に歩き続いたら、宙に浮かぶ駅があった。
「アルファ-9527小惑星への列車に乗りたい?夜明珠をきっぷと交換したら、乗れるよ」
ダフ屋の白ウサギが声掛けてきた。
ウサギに夜明珠を渡すとき、割った。
あたたかい。